――安室奈美恵引退から早1カ月。小室ファミリー離脱後、一度は低迷期に入った彼女が、なぜ再びトップに返り咲き、女王の座を譲らぬまま引退の日を迎えることができたのか? 彼女の勇退に敬意を表し、かつ世の中からいまだに聞こえる安室ロスの声に応えるべく、本誌視点で安室ちゃんが貫き通した最新音楽形態を徹底分析!
(写真/河本悠貴)
日本音楽界のトップに君臨する女性シンガーでありながら、去る9月16日、25年間のアーティスト活動に幕を下ろした安室奈美恵。90年代中期、「Body Feels EXIT」をはじめ、「Chase the Chance」「Don't wanna cry」など、小室哲哉のプロデュースによってメガヒットを放ったのは周知の通り。その後、結婚&出産に伴う一時的な活動休止を経て、自らの意思で小室プロデュースから離れることを決意。それからは手探り状態から、新たなクリエイターらと共に最先端のブラックミュージックを標榜したサウンドを追究し、小室時代では成し得なかったセルフプロデュース力を開花させた。本稿では、セルフプロデュース力を遺憾なく発揮させてからの安室奈美恵が挑んできた、最新の音楽スタイルを分析してみたい。彼女のスタイルが大きく変化することとなった、R&B/ヒップホップ・プロジェクト〈SUITE CHIC〉の発案者であり、安室奈美恵が引退まで走り抜けた音楽スタイルの立役者でもあるVERBAL(m-flo/PKCZ(R))と、ミックスエンジニアという立場で、安室の数々の楽曲を支えてきたD.O.I.の両氏を招き、偉大なる功績を残したシンガーの実像に迫る。
ジャネット・ジャクソンやローリン・ヒルに憧れた少女は、いつしか彼女たちを超えるまでの存在となった。
――まずは、お2人が安室さんと仕事をするようになった経緯を教えてください。
D.O.I.(以下、D):僕はSUITE CHICのアルバム『WHEN POP HITS THE FAN』(03年)で4曲のミックスを担当させていただいたのが最初です。安室さん名義の作品ではシングル「WANT ME, WANT ME」(05年)からで、ここ10年は多分、80~90%の楽曲をミックスさせてもらいました。
VERBAL(以下、V):僕は〈安室奈美恵&VERBAL〉名義でのコラボ曲「lovin' it」(01年)が最初ですね。その後、m-floのライブに来ていただいたことがあったんですが、そのときに僕がステージから落ちたのが安室ちゃん的にツボだったようで、そこからさらに親睦を深めました(笑)。
――安室さんの変革期となったSUITE CHICは、どのようにして誕生したのでしょうか?