「ダンさん×少女」の最高さたるや……。
(C)2018「HiGH&LOW」製作委員会
——今回『DTC -湯けむり純情篇- from HiGH&LOW』を撮って、コメディのセンスを感じた演者さんはいましたか?
福田 やっぱり、健二郎さんは単純にうまいですね。
平沼 健二郎って、本人が「みんなかっこいいキャラをやってるから、俺はハイローでは三枚目をやりたい」って言うわりには、DTCのインスタに上げる写真なんかは、超かっこいい写真を上げてくるんですよ(笑)。「お前~~~!」ってなるじゃないですか。結局かっこつけてるんだけど、「いや、君は違うでしょ」っていうところまで込みで、まさにダンなんですよね。
渡辺 それ言われるの、ちょっと恥ずかしいよね(笑)。
——山下さんは「いじられるのは嫌い」と公言されてますもんね。
福田 でも、いじられキャラの芸人さんで、「本当はいじられるのが嫌」っていう人は結構多いですから。本人がそう思っているのを、役を乗っけることで解決するんだったらすごくいいな、と思いました。
平沼 だから、健二郎がナダルさん(コロコロチキチキペッパーズ)と仲がいいのがよく分かるんだよな(笑)。ナダルさんってまさにそういうタイプで、自分をどう見せたいかが強くあって、それを崩すから笑いが生まれるわけじゃないですか。健二郎もそっち側でしょ。そう考えると、俺たちは延々と「ダン・アンビリバボー」【編注:『アメトーーク!』(テレ朝)で、ナダルのツッコミどころをフィーチャーした企画「ひんしゅく体験!ナダル・アンビリバボー」が3度放送されている】をやってるのかもしれない。
——ハイローに出演しているEXILE TRIBEの人たちは、普段はボーカルだったりパフォーマーだったり、アーティストとしての面がメインです。福田さんから見て、彼らがお笑いで活きるのは、どういう部分だと思いますか?
福田 熱が高いところですよね。熱量があれば、つまらないこと言ってもだいたい面白くなるんで。
平沼 基本、福田はEXILE TRIBEとか俺たちを馬鹿にしてますからね(笑)。「ぶっちゃけつまんないっすよ、ノリさん」みたいな雰囲気を出してくるんですよ。
福田 違いますよ。
平沼 いや、本心だもんな、わかるよ、わかるよ。
福田 違いますって。これはお笑いのメソッドとして存在するんですよ。昔、ピースの又吉さんが言ってたんです。若手の頃、ボケてもあんまりウケなかったんだけど、ある時から大きい声を出すようにしたら同じことを言ってもめちゃくちゃウケるようになった、って。僕はそれを忠実に守っているんです。大きい声を出すと、普通の流れでも面白く聞こえますから。
——福田さんは今回、映画の打ち上げ時に「最初の『乾杯!』の掛け声と共に会場に爆音で HIGHER GROUNDが流れて、 HIGHER GROUND大喜利の正解が1個出た感があった」とツイートされていました。
福田 会場にいる人たちはみんな普通に酒飲んでて、「こんなに面白いのになんで誰も笑ってねぇんだ」って思いました。
平沼 DTCの打ち上げでのひとりずつの挨拶終わりで「HIGHER GROUND」が流れるんです。「DTC、引き続き宣伝も頑張ります! よろしくお願いします!」ハイア~~~~!っていうのがずっと続くんだよね。
——それで誰も笑わないんですか!? めちゃくちゃ面白いじゃないですか。
平沼 面白いんだ? 俺たちはなんの疑問もなくて、みんなで「イエーイ!」ってやってるんだけど、福田がひとりでウケてて。
渡辺 「HIGHER GROUND」がある生活が当たり前になってますからね。
福田 僕はあの場であの曲がかかったとき、目が啓いた思いだったんです。「こんなところでHIGHER GROUND使うんだ」って。
平沼 ほら、馬鹿にしてるでしょ(笑)。
上條 ちょっと斜めから入ってくるんですよね。
福田 違いますって。本当に「この手があったか!」って驚いたんですよ。
——今回、映画の中でもハイローBGM大喜利的な曲の使い方をしていましたよね。ボケたシーンで「Do or Die」が流れるなど、メタなギャップで笑いをとりにきている感じがしました。
渡辺 脚本書いてるときから、音のことはけっこう話してたよね。
上條 ト書きに書いてあるんですよ。「ここで『HIGHER GROUND』」って。そんな台本見たことなくて、笑いました。
平沼 舞台ではよくあるんですよね。曲が流れて、演者が「いやいやいや!」って曲を止める演出の一種で。あれが好きなんで、やりたかったんですよね。それに、「この曲は絶対いいところで流れる」というお約束をハイロー本編が作ってくれているから、そこを外すと面白みが生まれる。ハイローが好きな人たちに刺さるような演出は、俺が好きなものでもありますから。
——やはり上條さんや福田さんにとっては、LDHの現場とそれ以外ではカルチャーギャップがあるんですね。我々「サイゾーPremium」ハイロー班はずっと、「HiGH&LOW=LDH自体の物語」説を主張しているんですが、外部のお二人にとって、LDHの面白さや魅力はどういうところにあって、それはハイローにどのようにつながっていると思いますか?
福田 懐の広さは感じますよ。僕らみたいなもんを、「LDHを馬鹿にしてる!」って思ってるのかもしれないですけど、それも込みで愛があるかないかをちゃんと見てくれてるな、と思います。
平沼 終わり?
福田 え、終わりです。
平沼 違う意味でバカにしてますよ(笑)。
上條 僕は、誤解を恐れずに言うなら、お芝居を演るというカテゴライズとは少し違うところにいる人たちが、あえて映画に切り込んできてどう勝負するのか、面白く見ています。ハイローもそうですが、もともと役者ではない人たちを、専業の役者さんと並べたときに遜色ないレベルまで持っていくのは、なかなか至難の業だと思うんですよ。それは、俳優さんに歌えって言っても歌えないのと同じことで。それでどこまで持っていくつもりなんだろうと思っていたら、いつの間にかここまで来てましたね。ここからどこにいくのか、僕自身もすごく楽しみで、渦中にいながらどうなっていくのかを見ていきたいというのはあります。良くも悪くも新しいものを作ろうとするパワーがLDHさんにはあると思っていて、どちらにせよ振り切ろうとしているところがすごい。中途半端に収めようとするよりは失敗してもいいと思ってるのか、とにかくやりきるところがいいんだと思います。
SWORD次世代たちの物語にも期待が募るわけで。
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——では最後に、今後の展開について何か、ちょっとでいいので教えてください!
平沼 今回は、これまでの作品であまり描ききれなかったキャラクターたちを掘り下げて描くというのもありつつ、次世代へのバトンというところを踏まえて書いていて。次のSWORDを背負っていくキャラクターたちは、テッツとチハルだし、SMGだし、達磨ベイビーズである、というのが一本の筋としてありました。一方で、今までのキャラクターは新しい話に突入していくと思います。次につながっていくヒントを探しながら観てもらえればと思います。
(文/斎藤岬)
■作品情報
『DTC -湯けむり純情篇- from HiGH&LOW』
監督/平沼紀久 脚本/渡辺啓、福田晶平、上條大輔、平沼紀久 出演/山下健二郎、佐藤寛太、佐藤大樹、駿河太郎、笛木優子、新井美羽ほか 配給/松竹 公開/9月28日(金)より3週間限定全国ロードショー
<あらすじ>
九龍グループとの闘いが終焉し、平穏な日々を送る山王連合会のダン、テッツ、チハル=DTC。だが平和さは3人の心をモヤモヤさせる。それを振り切るべく、行き先も決めずにバイクで旅に出ることに。途中で資金が尽きて温泉旅館で住み込みのバイトを始めた3人は、シングルマザーの若女将とその娘、そして若女将と惹かれ合う番頭の複雑な関係を知る。2人が再婚に踏み切れるよう、3人はWhite RascalsのSMGや達磨一家の達磨ベイビーズたちとも手を組んである作戦を実行する——。
■プロフィール
平沼紀久(ひらぬま・のりひさ)
1976年生まれ。俳優、脚本家、プロデューサー。2000年に役者としてデビューし、多くの舞台や映画・ドラマなどに出演。近年は『ライチ光クラブ』『帝一の國』など、演劇プロデュースなどでも活躍。
渡辺啓(わたなべ・けい)
1976年生まれ。脚本家。タレントとしてデビューし、俳優としても活動。その後脚本家に転身し、『ラストマネー~愛の値段~』(NHK)、『女はそれを許さない』(TBS)などを執筆。
福田晶平(ふくだ・しょうへい)
1980年生まれ。構成作家、脚本家。よしもとの劇場「神保町花月」公演やアミューズの「劇団プレステージ」公演などを手がける。映像作品では『また来てマチ子の、恋はもうたくさんよ』(TVK)など。
上條大輔(かみじょう・だいすけ)
1979年生まれ。映画監督、脚本家。大友啓史監督作品のほか、多くの邦画の現場で助監督として活躍し、『KABUKI DROP』で監督デビュー。BL漫画原作映画『ひだまりが聴こえる』(17)でも監督をつとめた。