――司法や行政、さらに民間などの反対姿勢もあって、暴力団への締め付けが厳しくなり、その勢力の弱体化が取り沙汰されている。そんな中で、九州で最も危険な団体とされてきた工藤会の活動の資金源が暴かれる事件が勃発した。暴力団最大タブーとされるシノギの実態とは?
『完全保存版 日本のヤクザ120人と昭和裏面史』(宝島社)
暴力団が実態を明かしたくない最大の「タブー」が、活動を支える資金源ではないだろうか? 多くの若い組員を抱え勢力を維持するにも、対立組織との抗争事件が起きた場合の戦闘力を発揮するにも、資金がなければ成り立たない。業界用語では「シノギ」と呼ばれるこれらの資金源──暴力団のサンクチュアリであり、触れられたくないタブーである暴力団マネーに今年7月、司法のメスが入った。九州北部で大きな勢力を保ち、一般市民への暴力もいとわない凶暴さが警察当局にマークされてきた特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)のトップに対して脱税事件の判決公判があり、所得税法違反罪で懲役3年の実刑が言い渡されたのだ。
ここで注意したいのが、これまで暴力団の脱税事件が摘発されたケースはほぼないといってよく、警察当局にとっては大きな成果といえる。ただ、脱税事件の捜査の過程で暴力団のシノギが白日の下にさらされたきっかけは、鉄の結束を誇った工藤会特有の暴力性が墓穴を掘ったこととなる皮肉な裏事情があった。
本稿では、この工藤会脱税事件をテキストとして追いつつ、暴力団の最大タブー「シノギ」の一部を見ていこう。