――アダム徳永の『スローセックス』シリーズや、『女医が教える 本当に気持ちのいいセックス』など、ここ10数年でも大ヒット作がいくつか登場しているハウツーSEX本の世界。同ジャンルでは女性向けの書籍は少ないが、「an・an」などの雑誌のセックス特集が同じ役割を果たしている。その変遷と、そこから見える性意識の変化とは?
多くの関連作品が制作された、加藤鷹氏の『秘技伝授シリーズ』。
シリーズ累計70万部突破の『女医が教える 本当に気持ちのいいセックス』【1】のような大ヒットタイトルがあるものの、系統立てて語られることの少ないハウツーSEX本。こういった書籍や雑誌の特集はどのような変遷をたどって来たのだろうか? AV監督で性愛に関する著書も多い二村ヒトシ氏は、「それこそ大正デモクラシーの時代から、お医者さんが書いたセックス関連の本にはヒット作があったそうです」と、この手の書籍の誕生について話す。
「西洋文化と医学が入ってきた中で、『セックスとは何か?』『男はオナニーをすべきなのか否か?』というような本が出てきたわけです。一方で、現在まで続くハウツーSEX本の源流にあるのは、奈良林祥さんの書籍ではないでしょうか」
奈良林祥氏は1919年生まれの医師で、女性を対象に結婚と性のカウンセリングを行っていた人物。71年にKKベストセラーズから発売した書籍『How To Sex』【2】はシリーズ化され、累計300万部のヒットとなっている。
そして、奈良林氏の著作は「夫婦やカップルがいいセックスをするための本」という色合いが濃かったが、その後は日本社会の恋愛や結婚事情も変化。ハウツーSEX本の役割も徐々に変わっていく。
「多くの人がお見合い等の紹介で結婚できていた時代は、『奥さんを性的に満足させられてないかも』という人がこの手の本の読者だったはず。一方で80年代のバブル経済では、男女ともに自由恋愛主義が拡大。90年代のバブル崩壊後はモテの格差も顕在化し、『セックスが上手い男のほうがモテる』という意識も一般化していきました。そんな時代には『モテる男はどんなセックスをしているんだろう?』『女性はセックスで何を求めているんだろう?』と気になる人も増加し、彼らがこの手の本の読者の中心になったはずです」(同)
そんな社会の変化も受け、2000年に大ヒットしたハウツーSEX本が、AV男優・加藤鷹の『秘技伝授』【3】。同作は、大手AVメーカー「ソフト・オン・デマンド」の同名タイトルのAVシリーズの書籍版にあたる。