サイゾーpremium  > 連載  > 精神異学~忘れられた治療法~【12】/統合失調症や自閉症は【母親】のせい!?
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精神異学~忘れられた治療法~【12】

【精神科医・岩波明】統合失調症や自閉症は“母親のせい”で発症!?

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[語句解説]“育て方”原因説

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本来は脳の器質的な問題で起こる統合失調症や自閉症に関して、20世紀の一時期、「家庭環境が原因で発症する」という説が唱えられたことがあった。アメリカの精神分析家ブルーノ・ベッテルハイムらは、自閉症は「母親が子どもを冷たく突き放した」結果発症するとし、そうした母親を「冷蔵庫マザー」と呼称、こうした説は、自閉症の子を持つ母親を苦しめることとなる。


 多くの人にとって、家族や家庭というのは「生きがい」です。自らの存在の根拠となっているほど重要なものでしょう。実際、日本人を対象とした調査においても、家族や家庭生活に関することで幸福を感じる人の割合は高い傾向にあります。

 ところが精神医学の世界においては、「家族」はしばしば悪者扱いされてきました。それどころか、“諸悪の根源”であると非難されてきた時期さえあります。「精神疾患が発症したのは家族に問題があったからだ」「家族の養育の仕方が悪いから病気になったのだ」などといった主張が、さまざまな疾患において繰り返されてきたのです。

 それらの多くは、いわゆる“精神療法家”や“精神分析家”と呼ばれる人によってなされてきました。彼らは、「子どもに対する愛情が足りなかった」「養育態度が冷たかった」「不適切な非言語的メッセージを与え続けた」などと言いつのり、患者の家族、特に母親を非難しては病気の責任を押し付けてきたのです。

 もちろん、例えば統合失調症などにおいて、薬物療法で症状がいったん改善したにもかかわらず、家族が勝手な判断で薬を止めさせてしまい再び症状が悪化するといったことはよくあります。しかし、親によるこうした単なる無知は、実際にはあまり大きな問題となることはそう多くはありません。彼らはたいていの場合、病気の実態を知っていくなかで次第に考えを改めていくものだからです。

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