――読者諸氏は「お焚き上げ」という供養の方法をご存じだろうか? 平安時代から長い歴史を持つこの儀式は、時代の変遷と共に対象となる品にも変化が起きているという。そもそもお焚き上げは、なんのために行うのか? 本稿では写真特集に則り、知られざる写真のお焚き上げの歴史と内情に迫ってみたい。
(写真/有高唯之)
お焚き上げ――念や魂が宿ったとされる品々を炎の力で浄化し、煙と共に天に還す供養の儀式である。それは、神事で神を招く庭燎を焚くことと、炎の力で清める密教の護摩焚きが結びついたものが由来ともいわれている。その歴史は古く、平安時代までさかのぼり、そこから1300年以上も続く儀式でもあり、紫式部によって書かれた『源氏物語』には、「幼児の枕元に天児という人形を置き、厄除けの身代わりとし、役目を終えた天児は、お焚き上げで供養した」と記されている。
そういった厄除け的に念を封じた人形の供養に始まり、長い歴史を持つお焚き上げの対象となるのは、故人の位牌や遺品、神仏に関わるものなどさまざま。現在では、故人が所持していたアルバムや、別れた恋人の写真、さらには心霊写真など、写真全般の依頼が多いという。来たる6月1日には、岐阜県・金神社で毎年恒例の「写真焼納祭」が行われるが、昨年の同祭では、なんと約10万枚にものぼる数の写真がお焚き上げされたというから驚きだ(なお、6月1日は、日本写真協会が制定した「写真の日」でもある)。
本稿では、そんな“写真のお焚き上げ”に着目し、複数の神社や寺院などに協力を仰ぎ、昨今のお焚き上げ事情について調査してみた。
もっとも多い依頼は故人にまつわる写真