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町山智浩の「映画がわかるアメリカがわかる」第126回

『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』――性差別は終わらない? 正義のラケットで女性憎悪を打ち砕け!

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『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』

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時は1970年代。60年代の公民権運動の流れを受け、女性解放の波がアメリカを覆っていた。そんな中、女子テニス世界チャンピオンのビリー・ジーン・キングは、女子大会の賞金額が男子のそれに比べ、遥かに低いことに異議を唱えていた。やがて彼女は、女子だけのテニス協会を設立、ツアーを開始。そこに男性優位主義者の老年チャンプが試合を挑むことになるが……。監督/ヴァレリー・ファリス、ジョナサン・デイトン、出演/エマ・ストーンほか。7月6日全国公開。


 英語の書類のSEXの欄に「好き」と書いてしまった、というジョークは昔からあるが、この場合のSEXは「性別」。映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』も、性別、つまり「男と女の戦い」という意味で、1973年に行われたプロ・テニスの男女チャンピオンの対決を描く実録映画だ。

 男子代表は、ボビー・リッグス(スティーヴ・カレル)。見た目こそ「浪花のモーツァルト」ことキダ・タロー先生そっくりだが、21歳でウィンブルドンに優勝したのを皮切りに、生涯に3回の世界選手権を獲得したテニス界最強の男。50代に入って引退していたが、突然「この歳になっても女子のチャンピオンなんかに負けはしない」と言い出し、当時の全米プロ女子チャンピオン、マーガレット・コートに挑戦した。

 試合は母の日に行われ、リッグスは圧倒的なパワーでコートを打ちのめし、「母の日の大虐殺」と呼ばれた。

 なぜ、リッグスは女性を叩き潰したかったのか。

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