――芸能界とマスメディア――特にテレビ局では、芸能事務所との調整で毎年のドラマ出演者などが決まっている。こうした商習慣は「芸能行政」とよばれ、一部の制作陣や芸能マスコミからは揶揄の対象となっている。これまで多くの芸能系メディアがこうした行政について報じてきたが、このところ少し構造が変化しているようだ。
(絵/鈴木裕之)
今年1月、芸能界にひとつの転機が訪れました。公正取引委員会が、タレントが芸能事務所から独立・移籍する際に、「ほかの事務所と一定期間契約してはいけない」などの取り決めを結ぶ行為が、法的に問題があると結論づけたのです。その背景には、ここ最近頻発している芸能プロとタレントとの契約トラブルがあります。
ことの発端になったのが、能年玲奈の独立トラブル。前所属事務所でバーニング系列である「レプロエンタテインメント」からの独立に際して、同事務所は、本名であるにもかかわらず、その使用を制限。彼女は「のん」に改名せざるを得なくなってしまいました。事務所から飛び出した彼女は、アニメ映画『この世界の片隅に』の主演声優で芸能活動を再開。しかし在京キー局では、本人稼働でのプロモーションができず、PRの囲み取材も彼女のコメントは放送されませんでした。
また17年には、モデルのローラも所属事務所「LIBERA」とのトラブルが解決せず、テレビ出演が激減しています。
このほか、大手芸能プロ「研音」から独立し、母親の松田美由紀が経営する事務所に移籍したことで、映画やCMには出ていても、地上波のドラマにはなかなか出演できていなかった松田翔太。個人事務所の元社長とのトラブルで、紅白歌合戦の連続出場まで途絶えた小林幸子ら、その例は枚挙にいとまがありません。