フェイクニュースが蔓延しつつある一方で、一般企業でもデータの収集と利活用に余念がない。購買情報だけでなく、個人の身体や思考まで抜き取り何かしらに転用される実態を見てみよう。
自動販売機と連動したコカ・コーラのスマホアプリ。ジュースを買うたびにかざしてポイントを貯めると、ジュースが1本もらえるが……。
あらゆる産業において、データの収集・活用が積極的に進められようとしている。その背景には、スマートフォンなど端末の普及はいわずもがな、製品がインターネットにつながる「IoT化」や、膨大なデータ=ビッグデータを処理できる人工知能(AI)の発展などがある。
世界大手タイヤメーカーであるミシュランは、運送会社に対して走行距離に応じてタイヤのリース料金を請求するサービスを、数年前から顧客に提供し始めた。このビジネスモデルは、「サービスとしてのタイヤ(Tire as a Service)」と呼ばれている。具体的にはまず、車体のエンジンとタイヤにセンサーを搭載し、「燃料消費量」「タイヤの空気圧」「気温」「スピード」などのデータを収集。クラウドに送られたそれらデータを、同社専門家が分析し「タイヤの交換時期」や「空気圧の高低」といった内容を運送会社にアドバイスするというものだ。同サービスでは、ユーザーとなる運送会社などは走行距離に応じたリース料に加え、メンテナンス料などを含めた金額をミシュラン側に支払う。つまり、ミシュラン側としては自社製品を売り出したり、貸し出すだけではなく、データ解析結果を“商材”として売りつつ、修理やメンテナンス、廃棄といった全工程で利益を得ているということになる。これは、データを駆使することで、製造業者がサービス事業者に転身した特筆すべき事例だ。日本でも、空調機大手・ダイキン工業が、AIとビッグデータを駆使したビジネスモデルの開発に乗り出している。「エアコンの故障時期予測」や、NECと共に進めている「AI・IoTを用いて知的生産性を高める空気・空間の実現に向けた共同研究」などがその一例となるだろう。
データの利活用が進むのは製造業ばかりではない。コカ・コーラの自動販売機では、専用アプリと連動させ規定本数を購入すると、「1本無料」というキャンペーンが行われている。