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町山智浩の「映画がわかるアメリカがわかる」第123回

『ザ・シークレットマン』――米政治史上最大のスキャンダル――告発者の正義とは?

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『ザ・シークレットマン』

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2005年、アメリカ政治史上最大のスキャンダル「ウォーターゲート事件」の告発者「ディープ・スロート」であると名乗り出た当時のFBI副長官マーク・フェルト。なぜ彼は機密情報を告発したのか? すべてを犠牲にした告発者の真意とは?/主演:リーアム・ニーソン、ダイアン・レイン 監督:ピーター・ランデズマン ほか。2月24日全国公開。


『ザ・シークレットマン』の主人公マーク・フェルト(リーアム・ニーソン)は、FBI副長官でありながら、ウォーターゲート事件をマスコミにリーク、ニクソン大統領を辞職に導いた内部告発者だ。

 ウォーターゲート事件を暴いたワシントン・ポスト紙の記者ボブ・ウッドワードとカール・バーンスタインの物語は、『大統領の陰謀』(76年)という映画になった。そこには「ディープ・スロート」という内部告発者が登場するが、画面にはシルエットしか映らない。それがマーク・フェルトだったという事実は、33年後の2005年に本人の告白で初めて明らかになった。この映画『ザ・シークレットマン』は、『大統領の陰謀』をフェルトの視点から描いている。なぜ、彼はそんなことをしたのか?

 映画は、30年間フーヴァー長官の片腕として働いてきたフェルトが、ニクソン大統領の法律顧問ジョン・ディーンに自分の仕事を話すところから始まる。「FBIは、重要な人物が妻以外の男女と親密にしている証拠を、すべてつかんでいました」。フーヴァーはそれで歴代の大統領を恐喝し、どんなに政権が代わっても揺るがない権力を守ってきた。

 ところが、そのフーヴァーが72年5月に、ついに亡くなる。フェルトは長官の後任はナンバー2である自分だろうと期待するが、ニクソン政権はL・パットリック・グレイという海軍の軍人をFBIトップに据えた。FBIを自分の掌中に収めるためだ。

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