通信・放送、そしてIT業界で活躍する気鋭のコンサルタントが失われたマス・マーケットを探索し、新しいビジネスプランをご提案!
●分散管理するシステムのイメージ
出典:総務省「IoT時代における新たなICTへの各国ユーザーの意識の分析等に関する調査研究」(平成28年)
――ビットコインが暴騰してブロガーやインフルエンサーが煽っていたかと思ったら、年明けにはいきなり急落して、さらには大手取引所がハッキングされて数百億円分もの仮想通貨が奪われた。あまりのジェットコースターぶりに一般人のボクらには、いったいぜんたい何がどうなっているのかさっぱり。果たして仮想通貨が安心して使える未来はホントに来るの?
クロサカ ビットコインなどの仮想通貨について、目にする機会が増えてきました。期待の声の半面、相場の乱高下や詐欺まがいの事件などネガティブな面も多々あります。さらに1月末には取引所のひとつ「Coincheck(以下、コインチェック)」から、約580億円相当の仮想通貨「NEM」【1】が不正送金される事件が起きました。改めてブロックチェーンやビットコインについて考えてみるため、第一人者である松尾真一郎先生をお招きしました。
松尾 コインチェックの件は、まだ真相究明や事件解決には至っていませんが、現時点(編集部註:2018年1月末)で報道の通り暗号鍵の管理がなっておらず、サイバー攻撃に対する対応が十分ではなかった。その根本原因は、それだけのスキルがある人間が内部にいなかったからです。記者会見で「6人の技術者で24時間365日の運用を行っていた」と言っていましたが、明らかに人数が足りません。
クロサカ 仮想通貨取引所を金融機関だと考えるならば、セキュリティへの備えがまったく足りてないわけですね。
松尾 金融機関であればFISC【2】のガイドラインがあり、金融庁がそれに基づいて検査します。FISCは金融機関の団体でもある以上、当然守らないといけません。しかし仮想通貨でいうと、そもそもガイドラインに当たるものが存在しない。リファレンスになるものが何もないので、取引所が良心的だとしても、どこまでやればいいのかわからない状況です。
クロサカ そのガイドラインを作ろうとする動きはまだないのでしょうか。
松尾 ブロックチェーンをインフラとしたサービス提供者が、技術的にセキュリティ確保のためにどういうことをしないといけないのか、まだ知見が十分に貯まっていない。もちろん、私たち専門家が書いた本では、鍵管理【3】の難しさなど問題を指摘しています。でも、今の取引所を運営している会社には、安全な鍵管理のための知識と十分な経験をもっている人が全然足りない。今の仮想通貨取引所は、基準もなければ、スキルもなく、経営者にも思慮が足りないことが多いため、起こるべくして起きた事件です。
クロサカ 取引所が、すぐに従来の金融機関並みになっていくとはとても考えられません。となると、これからもしばらくはこういう事件が起きうるのでしょうか。