法と犯罪と司法から、我が国のウラ側が見えてくる!! 治安悪化の嘘を喝破する希代の法社会学者が語る、警察・検察行政のウラにひそむ真の"意図"──。
AV出演強要問題
以前からAVへの出演を強要される被害は後を絶たなかったが、人権団体や内閣府男女共同参画会議の調査などによってその実態が次第に明らかになり、社会問題化。17年4月には外部有識者団体・AV業界改革推進有識者委員会が設置され、業界側との調整の結果、発売後5年で作品の販売・配信を停止するなどの業界健全化に向けた方針が大筋で合意された。
「『出演強要』で刑事・民事訴訟へ 人気AV女優 香西咲 実名告発 『脅迫・洗脳・囲い込み地獄』」(「週刊文春」201 6年7月14日号)
「AV強要『地獄のよう』 女子高校生に無理やりサイン」(「朝日新聞デジタル」2017年12月13日付)
AV出演者からの被害相談が相次ぎ、社会問題化しているAVへの出演強要問題。16年3月に国際人権NGOのヒューマンライツ・ナウ(HRN)がその実態に関する報告書を発表し、それと前後して多くのメディアがこの問題を取り上げたことで、広く一般にも認知されるようになりました。
しかし、AVへの出演強要というのは、実際には今に始まった話ではないはずです。むしろ、メーカーにせよプロダクションにせよ魑魅魍魎が跋扈していた1980~90年代のほうが、今よりずっと深刻な状況だったことは想像に難くない。その頃と比べて現在のAV業界は、よくも悪くも産業としてはるかに巨大化、成熟して一般の業界に近くなっており、大幅な体質改善がなされている。それなのになぜ今、この問題がにわかに浮上してきたのでしょうか?
2017年10月、筆者も登壇した「AV業界改革推進有識者委員会」の記者会見を報じる毎日新聞の記事。
各メディアで既報の通り、実は私は、業界の健全化を目的として17年4月に設置された外部有識者団体「AV業界改革推進有識者委員会」(現「AV人権倫理機構」)の4人の委員のひとりとして、この問題の解決に取り組んできました。それでようやく、なぜ今この問題がこれほど騒がれているのか、その真相を理解できた。当初の見立てでは、出演強要を防ぐのであれば、契約書をきちんと統一し、出演者への丁寧な説明を義務づけ、土壇場で「やっぱりやめる」といえる権利を認めればいいという、消費者保護のような施策でいけると考えていました。ところがふたを開けてみると、別の大きな問題があった。表面的には出演強要という形で出てきたけれども、その核心には「過去の出演作品を消してほしい」というAV出演者たちの切実な願いがあり、もともとはそれを実現する“手段”として持ち出されたものであると気づいたのです。本稿では今回から2回にわたってこの問題を取り上げますが、今回は私たち有識者委員会が、問題解決の方針を策定してきた経緯を説明したいと思います。