《Trace of the Light(部分)》(2014年、解体された家の窓に写真乳剤を塗布、撮影:木暮伸也)
幼少期に祖母の家に泊まったときのことだ。朝方ふと目を覚ますと、雨戸の節穴から差し込んだ光が障子に当たり、逆さまになった中庭の風景が半透明の紙の上に像を結んでいた。当時、「カメラ・オブスキュラ」や「ピンホールカメラ」という言葉もその原理も知らなかった私にとって、障子紙に映り込んだ不思議な像の発見は、まるでそのときにだけ起こった魔法のように、特別な出来事として長らく記憶されることとなった。
鈴木のぞみの作品は、小さな穴を通して自然が描いた像に初めて接したときの驚きを思い起こさせてくれる。彼女の代表的なシリーズは、窓から見える風景をそのまま窓ガラスに焼き付けるという作品で、感光性を与えたガラスにピンホールカメラやネガフィルムを介してその像を固定するというものだ。窓ガラスの上の不鮮明な像は、まるで風景が長時間露光されて自動的に焼き付いてしまったかのように見え、どこか郷愁を誘う。