これまで、『ナニワ金融道』や『ミナミの帝王』『闇金ウシジマくん』など、金にまつわるテーマにしてリアルな社会の暗部を描いたマンガが、数多く生まれてきた。こうしたマンガに通底するのは、金を稼ぐことがままならず社会からはじき出された人々とその“貧困”の実情だ。我々が生活する現実の隣に横たわる、もうひとつの社会を描いた「社会派マンガ2.0」とも呼ぶべき作品を紹介していこう。
本文でもとりあげた『ギャングース』と『健康で文化的な最低限度の生活』。さまざまな角度から貧困が描かれ、また現実と裏社会の結節点があぶり出されている。
人間とお金にまつわる泥臭いトラブルを描いたマンガといえば、『ナニワ金融道』(講談社)、『闇金ウシジマくん』(小学館)などのタイトルが真っ先に思い浮かぶが、ここ数年では、その社会派の流れをくみつつ、現代日本が抱える貧困や格差をリアルに浮き彫りにしようとする作品群の存在が、新たに目立ち始めている。
「モーニング」にて2017年まで連載された『ギャングース』(共に講談社)は、それら社会派マンガの中でもとりわけ大きな反響を呼んだ作品のひとつとなった。同作はマンガ家・肥谷圭介氏と、『振り込め犯罪結社』(宝島社)、『ギャングース・ファイル~家のない少年たち~』(講談社)など、貧困問題や犯罪関連の著作で知られるルポライター・鈴木大介氏がタッグを組んだ意欲作。ルポや実体験をモチーフにつくられた貧困&裏社会ものという意味では、本物の闇金関係者への取材を重ねて世に出された前述の『闇金ウシジマくん』や、暴力団に所属していた経歴を持つ作家・夏原武氏原案の『クロサギ』(小学館)などと似た、リアル感と緊張感が交差する作品となっている。
『ギャングース』の主人公(カズキ、サイケ、タケオ)たちは、ヤクザや半グレ、オレオレ詐欺集団など犯罪者を狙って“タタキ(窃盗や強盗)”を行うグループだ。作品内では、一般に知られることのないそのタタキの実態や、“裏稼業”に携わる人々同士のトラブルが、物語として詳しく描かれている。オレオレ詐欺や、タタキに詳しい元半グレのひとりK氏は、ギャングースについて次のような感想を寄せる。