毎年恒例のマンガランキング『このマンガがすごい!2017』(宝島社)の1位に選ばれたのは『賭博黙示録カイジ』のスピンオフ作『中間管理録トネガワ』(共に講談社)だった。これに限らず、近年、業界ではこうした人気作品のスピンオフが目につくようになり、中には原作を“喰う”作品も登場しているという――。
映画化も大ヒットを記録した『闇金ウシジマくん』には、個性的なキャラが多数出演する。
『闇金ウシジマくん外伝 肉蝮伝説』『闇金ウシジマくん外伝らーめん滑皮さん』『やみきんっ うしじまきゅん』。これらは、いずれも闇金融「カウカウファイナンス」の社長・丑嶋馨を主人公にした人気マンガ、『闇金ウシジマくん』から派生した、スピンオフ作品である。『闇金ウシジマくん』自体も、現在「ビッグコミックスピリッツ」(すべて小学館)で連載中の人気作品であるのだが、その原作と同時進行の形で、よく似た絵柄ながら別のマンガ家によってスピンオフが描かれている。わずか10年ほど前には、このような現象はあまり考えられなかったのではないだろうか?
具体的に各作品を見てみると、『闇金ウシジマくん外伝 肉蝮伝説』は、同作に登場する極悪キャラ・肉蝮を主人公にしたスピンオフ。肉蝮が耳を引きちぎったり、目玉をくり抜いたりと、ホラーマンガさながらの凄惨な描写が目を引く。
『闇金ウシジマくん外伝 らーめん滑皮さん』は、同じくウシジマくんのキャラであるヤクザ・滑皮を主人公としながら、ラーメングルメマンガとなっている異色作品。滑皮がヤクザのシノギの合間にラーメンを豪快に味わう。そのガサツな食べ方も、かえって美味そうに感じるのがポイントだ。
本編を踏襲した絵柄ながら、作画の山崎童々の過去作を見ると、ウシジマくんとは似ても似つかない少女マンガ調の絵柄で、コピー力の高さをうかがわせる。そして、『やみきんっ うしじまきゅん』は、「ウシジマくん」の登場人物たちの頭身を低くディフォルメした、いわゆる「SD化」で、おなじみのキャラたちによるギャグが繰り広げられる。
同様の展開は、高額のギャンブルで生徒間の力関係が決まる高校を舞台とした『賭ケグルイ』にも見られる。2014年の連載開始ながら、すでに、ヒロインのライバルを主役に据えた『賭ケグルイ双』『賭ケグルイ妄』、そしてSD化のパターンに属する『賭ケグルイ(仮)』(すべてスクウェア・エニックス)が同時に進行中だ。いずれも、原作としては本編と同じ河本ほむら氏がクレジットされているが、作画者はそれぞれ異なるのがポイント。こういった現象について、マンガに詳しいライターの奈良崎コロスケ氏はこう分析する。