――21世紀型盆踊り・マツリの現在をあらゆる角度から紐解く!
使い古された家電製品の数々が、“供養”という名のもとに楽器へメタモルフォーゼしようとは。本来の楽器では奏でることのできない、独特の音色も印象的だ。(写真/山本マオ)
2017年11月、東京タワーの真下で『和田永「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」~本祭1:家電雷鳴篇~』という奇妙な祭りが行われた。演奏されるのは、ブラウン管テレビや扇風機、エアコンなどの古い電化製品を改造したオリジナル楽器。「電化製品の供養と蘇生」がテーマのひとつとして掲げられており、祭りの開始にあたっては、高野山の僧侶による念仏も唱えられた。そもそも盆踊りが死者を供養するための儀式という側面を持つとは、たびたび本連載でも述べてきたことだが、大量生産の電化製品の中に宿る魂を供養する盆踊りとなると、前代未聞だ。
この奇祭の首謀者は、ブラウン管を太鼓のように叩いて音を鳴らす“ブラウン管ガムラン”など多くの楽器を開発してきた和田永。彼の構想の根底には、幼少時代のとある体験があったという。
「家族旅行で東南アジアに行ったときにインドネシアのガムランアンサンブルを見たんですが、(目の前に)出てきた鳥の化身みたいなキャラが強烈に記憶に残っていて。その影響か、『世の中の自分の知らないところには、その鳥の化身みたいな魔物がいるんじゃないか?』という妄想が生まれたんです。異国情緒(エキゾチシズム)じゃなく、異界情緒。妖怪が棲む異界に対する好奇心が子供の頃からあったんです」(和田氏)
当プロジェクトが始まったのは15年2月。和田氏は古い町工場が残る東京・墨田区の某所に拠点を構えると、募集で集まった家電に手を加え、「黒電話リズムマシン」や「換気扇サイザー」などの楽器を開発。同年末には、それらの自作楽器を用いた市民参加型のコンサートをスタートさせる。京都や茨城にも開発チームを組織すると、楽器開発のペースも加速。扇風機を使ってエレキギターのような音色を奏でる「扇風琴」など、奇妙な楽器を次々に生み出した。和田氏が続ける。