拳で解決できなくなった『HiGH&LOW』に与えられた課題
藤谷:ひとつひとつのシーンは本当に素晴らしいんですよ。琥珀さんがコブラを助けるシーンもすごくいいし、DTC周りの笑いどころもきちんと笑える。ただ連結部分がガタガタになっていて、1個1個のシーンは「10点満点」だけど「合計は?」ってなる。九龍を倒すのにしても、気がついたら九龍の半分は心変わりしてて、一方はバルジが手を引いたからって切り上げてしまう。SWORDのみんなの力で解決したわけではない。そこがちょっと消化不良に感じられてしまいました。
加藤:今回、九龍側でコブラが一番対立した善信が途中で退場してしまうのが良くなかったと思います。善信が倒されて、「俺の負けだ」って認めて去っていく話でもよかったのかもしれない。
藤谷:コブラが対峙する相手が、途中で善信から黒崎になってますしね。だから、乗り越えるべき対象がちぐはぐになっている。大臣も地位を失うでしょうし、九龍の皆さんもマスコミに捕まっていますが、拳で解決してないからカタルシスが薄くなっている。拳を封印したことが裏目に出ている。でも、拳を封印するっていうその選択は間違ってない。
加藤:その気持ちは間違っていない。ただそうなると、今までの『HiGH&LOW』とはまた違う技術が必要になってくる、ということですね。
藤谷:ザム3は、このままアクションで押し切ってもよかったのに、拳を封印したという新たな挑戦だったととらえることはできると思います。それはひとつの勇気だと思うんです。これで話を一回畳んだことによって、また新しいことができるのかもしれない。九龍も「破壊と再生」みたいなことを言ってましたし。
加藤:『HiGH&LOW』に限らず、例えばLDHピクチャーズ【4】が今後映画作っていく上で、多分ここで培ったものは失敗点も成功点も含めてすごく役に立つでしょうね。
【4】「LDH PICTURES」「HI-STREET PICTURES」「HIGH BROW CINEMA」の3つのレーベルからなるLDHの映画配給会社。
藤谷:ある種ベンチャー企業らしいというか、フィードバックがめちゃくちゃうまい集団だと思いますから。
加藤:「一回言われたことはすぐ覚える」みたいなところがありますよね。
藤谷:だからこそ次の展開にも期待が持てると思います。
加藤・藤谷の熱いハイロー談義はまだまだ終わらない!
後編は明日公開予定です。
(構成/斎藤岬)
<プロフィール>
加藤よしき
ライター。1986年生まれ。「Real sound」などで執筆。『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』(洋泉社)に寄稿。
ブログ:http://blog.livedoor.jp/heretostay/
twitterID:@daitotetsugen
藤谷千明
ヴィジュアル系とヤンキーマンガとギャル雑誌が好きなフリーライター。1981年生まれ。執筆媒体「サイゾー」「Real sound」「ウレぴあ」ほか。
twitterID:@fjtn_c