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第1特集
琥珀さん、勉強させていただきます!サイゾーpremiumハイロー祭【2】

俺たちもこれが最後の祭りじゃ!! サイゾー的ハイロー特集最後の花火『FINAL MISSION』徹底討論対談!

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加藤:あそこで琥珀さんたちが大臣をぶん殴っても良かったわけですけど、そういうことをせずにちゃんと解決したのは偉いです。ただ、拳だけで解決できないとすると、ハイローの一番の武器であるアクションを封印せざるを得ないので、そこに少しジレンマがありました。今回はザム2に比べるとアクションで物語る部分が少なくて、そのせいでガバガバなところをごまかしきれるだけの何かが足りなかった。だから不満も出てきてしまう。

藤谷:制作陣の方のインタビューでも言及されていますが、基本的に『HiGH&LOW』ってアクションとキャラクターと物語が連動していきますよね。その中でも感情に寄ったバトルと、アクションの快楽に寄せてるバトルがある。「情」のバトルと「動」のバトルというか。

 ザム1ですと、スモーキーと劉の戦いは「動」に寄っていて、ラストの琥珀さん戦は「情」の戦い。ザム2は、USB争奪カーチェイスのくだりは「動」で、ロッキーと蘭丸の戦いは「情」のバトルでした。今回は、「情」のバトルがなかった。もちろん、加藤さんもおっしゃる通り「拳だけでは解決できない」っていう大きなテーマがあったからですが、アクションが見たかった人からすると、消化不良な部分が出てきてしまうところがある。

 例えばですけど、源治を倒されたところで「俺が仇をとる」と黒崎が前線に立つだとか、九龍の頭とSWORDの頭が拳を交わすことがあっても良かった気はします。実際今回一番いいアクションシーンって、前半のワンカット風の琥珀さん九十九さん&雨宮兄弟vsヤクザチームでしょう。

加藤:片方はモロにヤクザなんですよね、スーツでドス持って。で、反対側から特殊部隊が出てくる。夢のような空間です。

藤谷:絵的には面白いんですけど、「追手に追われている人たち」以外の意味を持ってないから、アクションとストーリーを連動させるという意味では、ちょっとハイローイズムから外れている気がしました。

加藤:確かに。細かいところはいいんですけどね。今まで何回も繰り返し見てきたMUGENと雨宮兄弟の殴り合いの時と同じ技を雨宮兄弟が使っていたり、「おっ」とは思うんですけど、単体の映画のアクションとして観るとちょっと弱い。4人の共闘もザム2でもやってるんで繰り返しになってしまうし。

藤谷:ほかのアクションシーンも、琥珀さん+雨宮兄弟&ルードボーイズと、雨宮兄弟VS源治で、基本的には琥珀さん九十九さん&雨宮兄弟中心ですね。雨宮兄弟VS源治の「鎖」は笑ってしまいました。鎖を巻いた瞬間、めちゃくちゃ強くなって日本刀折れちゃうっていう、謎の源治弱体化もありましたけど。ザム2のロッキー対蘭丸でも鎖で首を締めていて、結構強い武器として使われてたんで、もしかしたらハイロー世界で鎖は車に次ぐ最強武器の可能性があります。

編集部:でも、雨宮兄弟推しとしてはあのシーンはちょっと……。正直、なんかカッコ悪いな、と。あの鎖巻くやつなんですか!ぜんぜんスタイリッシュじゃない!見た目がカッコイイのが雨宮兄弟の真理なのに……。

加藤:カッコいいじゃないですか!

藤谷:おもしろカッコいいぜ的な!

加藤:そうです! 僕は雅貴をおもしろ闇深(やみふか)お兄ちゃんだと解釈しているので、全然OKです!

編集部:「おもしろカッコいい」の人たちではなかったはずなんです! それと、2人+鎖vs1人は、はたしてカッコいいのか?と。

藤谷:それはたしかにそうですね。ゼロレンジコンバットで複数をバッタバッタとなぎ倒すのが雨宮兄弟の良さではあったから。

編集部:そうなんです。というか、雨宮兄弟は2人で全盛期100人のMUGENと対等に戦ったわけで、その2人+鎖でやっと勝てる源治の強さとは……と考え始めると、「ハイロー算」みたいになってきます。

加藤:「まさきくんたちはむげん100人を2人でやっつけました」

藤谷:「では、げんじくんは1人でむげんを何人やれるでしょうか?」

(ホワイトボードを使ってハイロー算を始める)

white board.jpeg
ハイロー算とは。

編集部 琥珀さんはザム2で源治と戦って、一応勝ってますね。琥珀さんと雅貴2人でも、どうにか勝って源治を水中に沈めてます。

加藤:あ、ここが決着がつかなかった理由としては、雅貴が1で広斗が弟だということで0.5だったとしたら……(ボードを書く)。

編集部:MUGEN時代から時間がたって、雨宮兄弟も琥珀さんも強くなってるはずです。だとすると数年前の琥珀さんと現在の源治がイコールなのかもしれず……(ボードを書く)。

藤谷:せんせー、私、算数の授業聞きにきたんじゃないんですけど〜。

加藤 そうですね、やめましょう。矛盾が生じますから。

村山のネット批判をどう見たか?

加藤:今回は脚本も、琥珀さんと九十九さん、雨宮兄弟に頼り過ぎだと思います。冒頭からコブラメインの話だったはずなのに、最終的に仕切るのは琥珀さんでしたし。

藤谷:ヤマトがスモーキーの気持ちを引き継いでなのか「俺たちももっと高く翔ぶ」って言いつつ、「だから琥珀さん、勉強させていただきます」になるのもよくわからない。

編集部:あれこそがEXILEイズムですよ。先輩の背中を見て後輩が「勉強させていただきます」。

加藤:僕は格闘技とかプロレスが好きなので、やっぱりあれを見てると猪木イズムを感じますね。

 子供の頃に、橋本真也と小川直也の試合をテレビで観てて、「橋本が負けたら即引退」みたいな流れがあったんですけど、橋本が負けたんですよね(2000年4月7日東京ドーム大会「橋本真也34歳 小川直也に負けたら即引退!スペシャル」)。会場騒然で、「これどうなっちゃうんだろ?」って思っていたら猪木がいつも通り「いくぞ! 1、2、3、ダーっ!」を始めたんです。さすがに観客も困惑するっていう。

藤谷:EXILEイズム、猪木イズムとしては間違ってないということでしょうか。

加藤:その気持ちは間違ってないけど、こっちの気持ちも考えてくれという。

藤谷:琥珀さん単体のストーリーとしては、ザムからつながる美しい流れではあります。後輩のコブラたちに説得されて正しく生き直そうと思った人が、後輩の危機に駆けつける。ただ、普通だったらそこから一歩引いて、コブラがあとを仕切るはず。そういう常識で考えたらいけないのかもしれませんが、「あ、琥珀さんが仕切っちゃうの?」とキョトンとなってしまった。まあ、琥珀さんはHIROさん、ひいては“LDHの擬人化”なので、それはまあ最終的には「勉強させていただきます」にならざるをえないのか……。

加藤:LDH内の価値観や道徳観に照らせば満点なんだろうし、当然の展開だと思うんですけど、観てるこっちとしては「おや? そういう話だったっけ?」ってなります。

編集部:三代目がどれだけ売れても「我々がいるのはEXILE先輩がいらっしゃるおかげでございます」みたいなことを何度もライブのMCで言うので、そういう価値観なんですよ、やっぱり。

加藤:フィクションの中では、そこを引いてほしかったですね。そのせいで「感情線がぐちゃぐちゃじゃねぇか!」と。

藤谷:こっちが一方的にそう思いこんでるだけかもしれないけど、ハイローには「次世代への魂の継承」みたいなテーマがあると思うんです。それが態度ではなく、「勉強させていただきます」というセリフになってしまう。すべてが唐突なんですよ。村山のネット批判のセリフもそう。

加藤:あそこは正直、僕はいただけないですね。あのシーンって、キャラの人生観みたいなものが前面に出ているじゃないですか。今まで多くの人が自由に解釈していた「このキャラはこういう感じなんだろうな」というところに、ある意味での正解を出してしまうシーンでもある。だから、「この人、こういう人だったの?」ってなってしまう。あと、ロッキーは若干声も別人になってませんでした?

藤谷:キャラを固めるためのセリフであるはずなのに。

加藤:「な〜んか熱いんだよな〜」って、「あったか〜い」みたいな、そんな喋り方じゃなかったでしょ、あなた! 村山に至っては「あなたインターネットなんか知ってたの!?」っていう。

藤谷:もしかしたらディレクターズカット150分バージョン(※存在しません)には「まちBBS」で、鬼邪高批判があったのかもしれない。国が「無名街は負の象徴だから」って爆破セレモニーに踏み切りますけど、よく考えたらいくら存在がタブーになってる街でも、「爆破しよう」となったら普通は周辺住民が反対しますよ。それが歓迎ムードになるっていうのは多分ですね、闇のクラウドソーシングサイトで1件800円とかで雇われた人がネットで暗躍して……。鬼邪高校に関してもそういう人たちによる心無い書き込みがあって、それに村山が傷つくシーンがあったとか。

加藤:鬼邪高なんて普段から絶対に炎上しまくりですからね。きっと燃やされた時に、まとめサイトでは「【朗報】鬼邪高校さん、炎上しすぎて校舎まで燃える」みたいなスレまとめが。

編集部:轟がレスバトルに参戦してしまう……。ちなみに、村山を演じた山田裕貴くんは「僕自身が普段から思ってることを村山が言ってくれた」と語ってました。(「ぴあ映画生活」11月9日掲載「山田裕貴が語る、『HiGH&LOW』の人気キャラ・村山とシンクロする思い」

藤谷:実際、ああいうセリフってヤンキーマンガだと結構ベタなものではあります。というか、『サムライソルジャー』【3】の最終巻でほぼ同じセリフがあるんですよ。自然に出たのかオマージュなのか、分からないですが。前回の対談でも言いましたけど、ヤンキーモノの自己肯定の根拠って「もっと卑劣なやつがいる」的な落としところになることが多い。「女性を騙してレイプするチャラい大学生のほうがヤンキーより悪」「ネットで中傷してるやつのほうがヤンキーの喧嘩より悪」という。これはある種の欺瞞でもあるんですが。

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【3】(山本隆一郎/集英社)2008年~2014年「週刊ヤングジャンプ」にて連載。数々の不良集団が乱立する渋谷で起こる抗争を描く。

加藤:『HiGH&LOW』って今までも、話の都合でキャラを動かしていたところは多々ある。でも俳優さんがそのキャラをしっかり守っているから、そんなにキャラブレはなかったと思います。でもあのシーンだけは完全に制作側が伝えたいことをキャラクターが言っちゃってるから、すごくキャラブレに感じてしまう。

藤谷:逆に日向は一貫して「復讐と祭り」だった。日向が自分の人生の目的だった「復讐」から解放されて「祭り」に動機が変わっていくのが美しい流れだった分、「おや? 村山ちゃん?」という印象を受けてしまったのかもしれない。村山に関しては本人の演技力というよりは脚本や構成の不備だと思うから、150分バージョン(※存在しません)に「SWORD地区・まちBBS」があれば解決するんですけど。

編集部: LDHはこれまで特にネットで揶揄されがちだったから、ずっと彼らが思っていたことなんだろうな、というのもあります。でも、最後の最後で言いたいことを一個我慢できないダサさを見てしまった感じはしました。それはそれでLDHらしいですけど、ハイローを観る人全員にその受け止め方を要求するのは無茶です。

藤谷こういうのも「ネットでグチグチ言いやがって」って怒られるのかな……。

加藤:いや、これはいいでしょう!  許してください!


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