法と犯罪と司法から、我が国のウラ側が見えてくる!! 治安悪化の嘘を喝破する希代の法社会学者が語る、警察・検察行政のウラにひそむ真の"意図"──。
不倫疑惑の山尾氏当選
2017年9月、「週刊文春」が、民進党元政調会長・山尾志桜里衆議院議員の男性弁護士との不倫疑惑を報道。山尾氏は疑惑を否定したものの、内定していた民進党幹事長への起用は見送られ、同氏が離党届を提出する事態に。同氏は翌10月、第48回衆院選に無所属で立候補。自民党前職の鈴木淳司氏との一騎打ちを834票差で制し、3回目の当選を果たした。
2017年10月22日に投開票が行われ、結局は自民党の圧勝に終わった第48回衆院選。振り返るとメディアや国民の関心は、民進党の事実上の解党や希望の党への合流、立憲民主党の結成など、もっぱら野党の混乱ばかりに向けられていた印象です。
そんな中で私は、ある意味ではそうした政局以上に重要かもしれない、とある事象に興味をそそられました。それは、不倫疑惑を報じられた元民進党の山尾志桜里が無所属で出馬し、僅差ながら当選を果たしたことです。
というのも山尾の当選は、不倫全般、特に政治家の不倫に対するバッシングが強まっているように見える中で、その疑惑を持たれた女性政治家が逆風をはねのけた、おそらくわが国の政治史上初の“快挙”だからです。そしてそれは、政治家の不倫というものに対する社会の認識が、長い年月を経て変遷してきた歴史と、その帰結としての現状を象徴するできごとでもあるのです。それはどういうことか、歴史を振り返りながら解説したいと思います。
まずは予備知識として、そもそも不倫なるものが日本の法律においてどのように規定されているかを確認しておきましょう。民法では不倫は「不貞行為」と定義され、第770条において離婚事由になると定められています。この場合の不貞行為とは、配偶者以外の異性との性行為を指し、配偶者以外との性交渉を伴わないデートやキス、あるいは婚姻関係にない男女の浮気などは含みません。そして不倫した配偶者とその相手は、不貞行為を含む不法行為による損害賠償について規定した第709条および第710条にもとづき、不倫された配偶者に対して損害を賠償する責任を負います。
それに対して刑法には、不貞行為を処罰する規定はありません。要するに現在の日本において不倫は、貞操義務違反により民事上の損害賠償責任が生じる「不法行為」ではあるが、刑事責任を問われる「犯罪行為」ではなく、その行為自体によって警察に逮捕されたりはしないということです。