――21世紀型盆踊り・マツリの現在をあらゆる角度から紐解く!
「オバQ音頭」をはじめ、昭和のアニメには付きものだったアニソン音頭。作品としての完成度はもちろん、ほとんどの楽曲にオリジナルの振り付けがあるのも素晴らしい。
高度経済成長期以降、日本各地の地域社会のあり方は激変し、それまで地域の行事を支えてきた自治会や青年会が弱体化していく中で、盆踊りや神社の祭礼などの伝統行事も影響を受けた。過疎化や少子高齢化の大波に飲まれるように、多くの盆踊りや祭礼が歴史の幕を下ろしていった。
その一方で、さまざまな地域の人々が一気に流入し、コミュニティが再編された都心部や郊外では新たな地域イベントが必要とされた。従来のように氏子や檀家、地縁に支えられるものではなく、地域住民のレクリエーションをメインの目的とする新たな形の地域イベント――そうしたものとして始まったのが各地の夏祭りであり、アニソン音頭が鳴り響く現代型の盆踊り大会だった。例えば、「アラレちゃん音頭」や「ドラえもん音頭」を連想する方も多いだろうが、こうしたアニソン音頭こそ、高度経済成長期以降の日本におけるルーツ・ミュージックのひとつと言っていいのかもしれない。
その原点といえば、やはり1966(昭和41)年の「オバQ音頭」だろう。藤子不二雄による『オバケのQ太郎』は「週刊少年サンデー」(小学館)での連載、TBS系列32局ネットでのテレビ放送、菓子メーカーである不二家とのタイアップ、おもちゃや文具などのマーチャンダイズ展開、レコード販売など、まさにメディアミックス的手法によって大ブレイクを果たしたが、「オバQ音頭」は盆踊り会場という新たなプロモーションの場をアニメ業界/レコード産業にもたらした点でも重要だった。