ラテンアメリカの映画はキューバ革命によって生まれた――ボリビアやチリなど軍事独裁の影響もあって不安定な政治状況が続く国々が歴史的に多い地域だが、かの地の映画監督たちは亡命を繰り返しながら制作し、革命だけでなく、作品も各国に伝播していったという。そんな映画に映し出される闘いとは?
オダギリジョー(41歳)が革命に燃える青年を演じる。(C)2017 “ERNESTO” FILM PARTNERS.
キューバ革命(1959年)から約半世紀以上の時を経た今年。チェ・ゲバラと共に戦った日系ボリビア人、フレディ・マエムラの生涯を描いた『エルネスト もう一人のゲバラ』が公開された。
この映画は、もともと医学生としてキューバに留学したマエムラがゲバラに感化されたために、ボリビアでの革命を目指して母国に戻り、戦いに身を投じるという話だが、当時のキューバはボリビアだけではなく、ラテンアメリカ各地の革命を支援していた歴史がある。また、革命だけではなく文化や福祉においても、同国はラテンアメリカを牽引してきたと、スペイン語文学を研究する東京大学・柳原孝敦教授は語る。
「『エルネスト』でも描かれているように、59年に革命を達成したキューバは、ラテンアメリカ各国での医師らを養成する目的で留学生を募ったり、ラテンアメリカ圏内で映像文化を広げていこうと、86年には国際映画テレビ学校がつくられます。この学校には魔術的リアリズムの旗手として、82年にノーベル文学賞を受賞した『百年の孤独』などの著者、ガルシア=マルケスが関わっており、彼が直々に映画の脚本づくりのワークショップを行うなど、通常の映画学校では考えられない豪華さ。スペイン語圏のあちこちから学生が集まりました」
実は革命をきっかけにして、キューバを中心とした芸術文化が出来上がってきたのがラテンアメリカ。本稿では、そんなラテンアメリカの映画史を「革命」という観点から振り返ってみたい。