法と犯罪と司法から、我が国のウラ側が見えてくる!! 治安悪化の嘘を喝破する希代の法社会学者が語る、警察・検察行政のウラにひそむ真の"意図"──。
欧州各地でテロ続発!
2017年5月、イギリスのマンチェスター・アリーナで、米歌手アリアナ・グランデの公演直後に自爆テロが発生し、犯人を含む23人が死亡。翌日、イスラム過激派組織ISが犯行声明を発表した。さらに6月には、ロンドン橋で暴走車が歩行者を次々にはね、8人が死亡、実行犯3人が警察に射殺されるなど、欧州でイスラム過激派によるテロとされる事件が続発している。
2017年5月にイギリス・マンチェスターのイベント会場で23人が死亡した自爆テロや、同年6月にロンドン橋で車が通行人をはねて8人が死亡した事件など、欧州で“多発”しているテロ事件。それらの多くはISもしくはその支持者による犯行とされ、そのつど日本でも大きく報じられています。結果わが国では、テロを未然に防ぐという建前のもと、17年7月にいわゆる「共謀罪」法が施行されました。テロに対するこうした危機意識は、東京オリンピック開催を3年後に控えた日本だけでなく、世界中に広まっています。
しかし、ここで考えていただきたいことがある。それは、先進諸国の政府やメディアが喧伝するように、本当にテロの脅威は以前と比べて増しているのか、ということです。確かに、全世界のテロによる年間の犠牲者数は、00年以降の15年間で10倍に膨れ上がり、今や約3万人に上るというデータはある。また実際、01年の米同時多発テロをはじめ、大きな事件もたびたび起きている。ところが一方で、対テロを声高に叫んでいる欧米に限っていえば、米同時多発テロを除くと、00年以降のテロの犠牲者数は世界全体のわずか0・5%に過ぎません。そして、実は日本を含む先進諸国では、現代よりむしろ冷戦期のほうが、事件の規模や頻度の面でも、また実行犯の組織力や戦闘力の面でも、テロの危険性ははるかに高かったのです。今回は、そうした冷戦期のテロを振り返り、先進諸国における現代のテロがいかに“低レベル”で、今がどれほど“安全”な時代であるかを解説したいと思います。