ここまでは、筑豊地区の歴史からアングラビジネスについて見てきたが、九州地区には国内の自治体では類を見ない独自の経済形態があるという。九州のビジネスを牛耳る、その団体の“正体”とは?
九州各県には地域の名士たる老舗企業がいくつか存在する。狭い範囲での地元経済を動かすのは彼らだが、こと“九州経済”という大きな視点に立てば、最も求心力があるのは「福岡七社会」だろう。
正式名称は「互友会(ごゆうかい)」といい、非公式の任意団体だ。1950年代に総会屋対策の情報交換などを目的に、九州電力、西部ガス、西日本鉄道の3社で発足した。その後、福岡銀行、西日本銀行、福岡シティ銀行、九電工が加わり、いつしか福岡七社会と呼ばれるようになった。2004年、西日本銀行と福岡シティ銀行が合併して西日本シティ銀行が誕生。1社減った枠を埋めるべく新加入したのが、九州旅客鉄道(JR九州)だった。
久方ぶりに福岡七社会の存在感が浮き彫りになったのは、19年4月に予定されている福岡空港民営化後の空港運営権争奪戦だ。現在、福岡空港は国が管理しているが、旅客者数は増え続けて16年に約2199万人に達し、滑走路増設が喫緊の課題だった。その費用を捻出すべく民営化を決め、今年5月に公募選定手続きを始めた。
オリックス、住友商事など複数の大手企業が入札参加を検討する中、昨年末には福岡七社会を中心にいち早く地元連合が結成され、18年5月に選定予定の優先交渉権者となるべく動き始めたのだ。そんな福岡七社会の中でも、特に影響力があるのが、福岡銀行と九州電力だ。