法と犯罪と司法から、我が国のウラ側が見えてくる!! 治安悪化の嘘を喝破する希代の法社会学者が語る、警察・検察行政のウラにひそむ真の"意図"──。
金塊強奪事件が多発
2017年4月、福岡市内で、貴金属店勤務の男性が、金塊の買いつけ資金として銀行から引き出した3億8400万円を強奪される事件が発生。 福岡県警は、福岡空港で多額の現金を持った韓国人の男らを確保したが、取り調べの結果、直接の関係はなしと判明した。ほかにも17年6月に東京都中央区で多額の金塊が盗まれるなど、金塊絡みの事件が多発している。
「2016年7月、福岡市で男性らが7億6000万円相当の金塊を盗まれる」「2017年4月、福岡市で男性が金塊の買いつけ資金3億8400万円を奪われる」「2017年4月、金塊密輸を目的に福岡空港から現金7億3500万円を国外に持ち出そうとした疑いで韓国人4人を逮捕」
近年、福岡市を中心に多発している金塊絡みの事件。無税の外国で買った金塊を国内に密輸するといった非合法な目的があるならともかく、なぜその道のプロである警備会社に運搬と警備を頼まなかったのか、と思わずにいられないケースも散見されます。いろいろ事情はあるのでしょうが、ともかくも他者に任せられず、個人で運ばざるを得なかったということ。まさにその事実が、“貴重品を運搬・警備する”という、秘密裏に行ってこそ意味のある行為が内包するある種の胡散臭さと、そこにひとつの要因があるであろう警備会社という存在の近づきがたさを象徴している気がします。
そこで今回は、金塊強奪事件と直接の関係はないものの、それによって図らずも一般からの距離があらわになった“警備”なる行為、もしくは“警備会社”とはそもそもいかなるものであるかを分析してみたい。それらの歴史をひもとくことによって、施設・雑踏の警備業務を主体とする現代の警備ビジネスが、実はこの半世紀間に成立したきわめて新しいものであり、むしろ日の当たらない仕事であり続けた貴重品運搬こそ、この巨大ビジネスの“原点”であることが明らかになるのです。
まずは前提として、1972年に制定された警備業法において、警備会社の業務がどのように分類されているかを解説しておきましょう。同法では、さまざまな施設の巡回・保安を「第一号警備業務」、交通誘導・雑踏警備を「第二号警備業務」、貴重品運搬警備を「第三号警備業務」、いわゆるボディガードを「第四号警備業務」と規定しています。ここで対照的なのが、各業務に携わる警備業者の数です。一号と二号のサービスを提供しているのが、警備会社総数約9300社のうちの7000社近くに上るのに対し、三号と四号に関しては600~700社と10分の1程度にとどまっている。CMなどの影響もあり、警備会社と聞いて一般の人が真っ先に思い浮かべるのもおそらく一号と二号のほうでしょうが、実際のビジネス規模としてもそちらが圧倒的に大きくなっているわけです。