『TLC』
TLC(販売元:ワーナーミュージック)
クラウドファンディングで調達した資金(ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックは2万ドルも出した)で作られた本作。セルフタイトルなのは最終作だからこそ、か。要所要所に漂う90年代の残り香、TLCらしい低血圧モードはいい。ただ、デラックス・エディションに収録されている過去のヒット曲のリマスター版は興を削ぐ感も。
最後のアルバム、だという。
とはいえ、アーティストのその手の宣言がアテにならないのはヒップホップ/R&B業界の常識。我々が過去にどれだけ「ラストアルバム」「引退」「カミングスーン」に騙されてきたか思い出そう。
とはいえ、このグループの場合は特殊かもしれない。3文字からなるアーティスト名を象徴する3人組として人気を博したのに……今となっては、3人が揃っていた時期より、2人組としてのキャリアのほうが長いのだ。
そんなT・ボズ、レフトアイ、チリ。今回はTLCについて書く。
そんなTLCが出発点からして特異だったのは、「寄せ集めグループ」だった点だ。
オーディション番組ブーム以降の欧米音楽界やK-POPの世界はともかく、ソウル~R&Bやヒップホップのグループは、自宅やバーバーショップ、教会やストリートでの“自然発生”が基本だ。兄弟姉妹で構成されるグループ──アイズレー・ブラザーズからレイ・シュリマーまで──が圧倒的に多いことも、その証明かもしれない。そんな中で、TLCの特殊性は際立つ。
とはいえ、TLCの成立経緯は「オーディションで集められたグループ」と単純に結論づけるには、あまりにややこしい。