サイゾーpremium  > 特集  > 本・マンガ  > 歴史学者や芸人が選書!日本史のウラ側に迫った本【3】/大航海時代における【日本人奴隷】
第1特集
歴史学者や芸人が選書!日本史のウラ側に迫った本【3】

【東京大学史料編纂所准教授・岡美穂子のオススメ本】ポルトガル人に国外へ連れ出された大航海時代における日本人奴隷の実態

+お気に入りに追加

――中公新書から出された『応仁の乱』がバカみたいに売れている。日本史関連の書籍としては異例のことだというが、知られざる史実をつまびらかにしたような本当に面白い書籍は、ほかにもあるのではないか――。そんなヤバい“日本史”本15冊を、歴史学者や社会学者、ジャーナリスト、お笑い芸人らに紹介してもらった。

岡美穂子(おか・みほこ)

1707_oka_sensei_150.jpg

1974年、神戸市生まれ。人間・環境学博士(京都大学)。スペイン、ポルトガルなどへ留学。現在は東京大学史料編纂所の准教授としてキリシタン史などを研究。著書に『商人と宣教師 南蛮貿易の世界』(東京大学出版会)、共著に『大航海時代の日本人奴隷』(中公叢書)。


1707_aflo_JUEA576657_250.jpg
南蛮貿易で買われた日本人奴隷は、アジア、ヨーロッパ、アメリカ大陸へ渡ったという。(写真/Bridgeman Images/アフロ)

 2013年5月13日付の「読売新聞」にて、安土桃山時代に日本人奴隷3人がメキシコに渡っていたことを示す史料が発見されたと、いささかセンセーショナルに報じられました。日本人と“奴隷”というワードは一般的に結びつきにくいかもしれませんが、16世紀半ば~17世紀初頭の南蛮貿易で多数の日本人がポルトガル人によって国外へ連れ出されていたことは、研究者の間では知られていました。

 この日本人奴隷の存在は、ポルトガル人の来航により突然生まれたわけではありません。その背景を知るのに適しているのが『雑兵たちの戦場 中世の傭兵と奴隷狩り』【1】。同書の舞台となる戦国時代は、大河ドラマなどの影響もあり、英雄的な武将たちによる華々しい合戦のイメージがあります。しかし、実際の兵力として機能したのは“雑兵”と呼ばれる下層民で、彼らは平時は農民として生活し、戦時は兵士として食い扶持を得た、いわば“半農半兵”の季節労働者のような存在でした。

 もっとも、戦に参加したからといって生活が保障されるほどの恩賞を与えられるわけではないので、雑兵たちは戦地で人を狩り、人質にして身代金をとったり人買いに売ったりしていた。つまり、この時代には人身売買が当たり前のように行われており、そこへポルトガル人がやって来たことで、マーケットが海外にも開かれたのです。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...
この記事を購入※この記事だけを読みたい場合、noteから購入できます。

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2025年5月号

新・ニッポンの論点

新・ニッポンの論点
    • “分断の時代”に考える20年代の【共産主義と資本・自由主義】
    • 全国紙も報じた終末論【2025年7月人類滅亡説】のトリセツ
    • 世代を超えたカリスマ「SEEDA」の【アップデート&処世術】
    • 『GQuuuuuuX』で変わる!? ガンダムの【IPビジネス新戦略】
    • 教えて! 大﨑洋さん!! 逆風での船出「大阪万博」の愉しみ方
    • パレスチナのジェノサイドと【日本の難民問題】の深層にあるもの
    • さらば?芸能界のドン、【バーニング周防郁雄社長という聖域】
    • [週刊誌記者匿名座談会]憶測と中傷び交う中居・フジ問題の論点

NEWS SOURCE

インタビュー

連載

    • 【マルサの女】名取くるみ
    • 【笹 公人×江森康之】念力事報
    • 【ドクター苫米地】僕たちは洗脳されてるんですか?
    • 【丸屋九兵衛】バンギン・ホモ・サピエンス
    • 【井川意高】天上夜想曲
    • 【神保哲生×宮台真司】マル激 TALK ON DEMAND
    • 【萱野稔人】超・人間学
    • 【韮原祐介】匠たちの育成哲学
    • 【辛酸なめ子】佳子様偏愛採取録
    • 【AmamiyaMaako】スタジオはいります
    • 【Lee Seou】八面玲瓏として輝く物言う花
    • 【町山智浩】映画でわかるアメリカがわかる
    • 【雪村花鈴&山田かな】CYZOデジタル写真集シリーズ
    • 【花くまゆうさく】カストリ漫報
サイゾーパブリシティ