──年齢不詳、職業不明、痛風持ち……老獪タカスが、自らの五臓六腑をすする気合で過激に告白&提言
『前夜』の宣伝用カード。写真集はさほど売れなかったが、撮影時に見せた、北欧の血が流れるLiLiCoのあっけらかんとした様子はほほえましかった。その後、各社から幾度となく再出版しないかと言われたが、私は封印した。
写真集業界にオバケが出た。忘却の彼方から加納典明が出たのだ。
LiLiCoの新しい写真集が5月26日に発売になると知ったのは、その数日前のことだ。しかも過去の写真が再録されているというではないか。版元に確認すると、確かにかつて私がプロデュースし、加納典明が撮影した『前夜』(風雅書房/1995年)から28ページも再録しているという。私には一切連絡がなかった。新写真集のタイトルは『絶夜 LiLiCo写真集』(双葉社)。加納がLiLiCoに声をかけ、昔の写真と撮り下ろしを併せて出版することを提案したらしい。
90年代なかば、加納は業界からまったく相手にされなくなっていた。95年「月刊THE TENMEI」(竹書房)のエロ表現で逮捕される直前、記者会見を開いて表現の自由やエロに対する思いを熱く語り、徹底的に戦う姿勢を示した。しかし、逮捕されるやいなや、すぐに謝り罰金を払って出てきたのだ。出版社の担当編集者がまだ留置されているにもかかわらず、である。結局、版元だけが最後まで戦った。これには業界全体が呆れ果てたものだ。
そんな状況下で、私はほどなくヘアヌードが終わると感じていた。ここで巻き返しがあってもいいのではないかと考え、思い切って加納を起用した。そして完成したのが、当時無名のLiLiCoの『前夜』である。加納は言った。「高須さんは天使みたいだ」。