サイゾーpremium  > 特集  > 芸能ゴシップ  > ヤバすぎる芸能界小説/作家は【芸能界】をどこまで描くのか?

――世間が芸能ゴシップで賑わっている昨今。「読者の興味があれば、そこに小説のテーマあり」と言わんばかりにネタにされてきた芸能界。小説家が取材して描くものもあれば、タレントが自ら描くものもある。タレントによる小説が評価されつつある今、芸能界の裏側を暴くのは、彼ら自身なのかもしれない!?

加藤ミリヤがファックミー! と叫び、羽田圭介がファンとセックス暴露、作家は芸能界をどこまで描くのか?の画像1
取材時には、タレントが書いた小説から、エンタメ作家が芸能界を描いた小説まで、膨大な量の本が持ち込まれた。
(写真/吉岡教雄)

──今回のテーマは「芸能小説」です。普段、ライターとして書評などを書かれている皆さんにお集まりいただき、芸能界を舞台にした小説の現在や、ここ10年ほど続いている「タレント/芸人小説」ブームについて見ていきたいと思います。

倉本さおり(以下「」) 芸能界を描いた小説には今、新しい動きがあるように見えます。それを話す前に、まずは、2015年に『火花』【1】で芥川賞を受賞し、せんだって二作目『劇場』【2】を発表したばかりの又吉直樹さんの話から始めましょうか。

トミヤマユキコ(以下「」) 『火花』は面白く読んだんですが、『劇場』は、冒頭の中二病っぽさが気になってしまいちょっとつらかった。

 主人公が売れない劇作家で、書く作品も本人も、確かに中二病感満載なんですよね。それから「あ、またか」と思ったのが、主人公の彼女のキャラが、『火花』に出てくる先輩芸人の彼女と、ほぼほぼ同じようなキャラに見えてしまうことです。優しくて、彼氏のすべてを受け止めてくれる、いわば「非実在彼女」みたいな存在。

米光一成(以下「」) あれって、非実在なのかな? 芸人さんってモテるから、そういう女性が現実にいるんだろうなと思った。 もっとも、俺の生きている狭い世界を基準にすると、「そんなん、いねえよ!」なんだけど(苦笑)。

 『火花』に登場する先輩芸人の彼女は、実は風俗で働いているのですが、それを知った主人公と先輩は大きなショックを受ける。以前、小説家の松田青子さんが「食わせてもらってるくせに、風俗で働いていることに引くとか、ひどくないか!?」と文芸誌の創作合評で指摘されていて、本当にその通りだと思ったのですが、一方で、芸人の世界ってマッチョだから、リアルっちゃリアルな気もするんですよね。タレント小説って、自分の見知った世界を書くか、あるいはまったく異なるファンタジーの世界を書くか、という2パターンがある。又吉さんは前者。そして、近年の成功例として双璧は、芸能界を舞台にした小説『ピンクとグレー』【3】で作家デビューしたNEWSの加藤シゲアキでしょうね。

 後者に当たるのは、爆笑問題の太田光や、『KAGEROU』(ポプラ社)で華々しくデビューするも、その後音沙汰のない齋藤智裕(水嶋ヒロ)などですね。

 太田さんの最初の小説『マボロシの鳥』(新潮社)は賛否両論ありましたが、否の理由は、書き手が本人性を引き受けず、ファンタジーに逃げてしまったこと。タレントが書いた時点で、よくも悪くも本人性が必ずつきまとうのだけど、これまで多くの人がそこから逃げてしまっていた。その点は、水嶋も同様です。

 描く世界がファンタジーでも、それがすごければいい。でも芸人さんの小説って、ファンタジー憧れ、小説憧れで止まってしまうことも少なくなかった。

 太田さんは、「テレビブロス」(東京ニュース通信社)の連載で、自身の読書遍歴を公言してきた人だから、小説を読んでいても「これって、憧れの作家へのファンレターなのでは?」と思ってしまうことがありました。

 それで言うと、又吉さんの小説も、純文学に対する、ある種のファンレターとも言えるのだけど。

──では、女性のタレント作家はいかがでしょうか?

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