――テレビやインターネットの広告で見かける機会も増加し、健康意識の高まりから利用者も増えているように見えるサプリメント。だが「健康への効果は?」と問われると、微妙なもののほうが多いのが現状だ。ではなぜ売れ続けているのだろうか? 政治的な後押しも受け、今後も成長の予測される業界の謎と効用の実情を見ていこう。
医療・薬に頼る前に「まずは生活習慣から見直すべき」という理屈はわかるのだが……。
近年は、コンビニエンスストアでもスナック菓子に近いパッケージで販売され、手軽に購入できるようになったサプリメント。サイエンスライターの佐藤健太郎氏によると、その市場の成長は、国が後押ししている部分もあるという。
というのも、安倍内閣の掲げる成長戦略には、「健康長寿産業の育成」が大きなテーマとして入っている。その中では「健康増進に関する産業を現在(2013年時点)の2兆円から、2020年までに9兆円まで引き上げる」という方針が打ち出されているそうだ。
「その背景には、財政を圧迫している医療費の削減という大きなテーマがあります。そして市場拡大のためのひとつの方策として、特定保健用食品(トクホ)などの効能表示の規制緩和を行っているわけです」(佐藤氏)
『急成長する「健康食品・サプリ」3兆円ビジネス』(鈴木博道氏との共著/ぱる出版)などの著書があるジャーナリストの福崎剛氏も、「医療費の削減や、08年より始まった特定健康診査・特定保健指導(メタボ健診)が市場の成長を後押ししている」と話し、食生活や食品の変化も市場成長の理由に挙げる。
「近年はスーパーなどで販売されている野菜も、大量生産の影響から栄養価が大きく落ちているという話もあります。また、かつては厚労省も『1日30品目を』という食生活指針を掲げていましたが、忙しく働く人が増えてから、その目標も時代に合わないものとなり00年に削除。そこで政府は、補助的に栄養を摂取できるサプリメントに期待を寄せて、病院や薬に頼る手前のセルフケアに力を入れてほしい……と考えているのでしょう」(福崎氏)
インターネットやテレビのBS、CS局でも、サプリメントや健康食品の広告は以前より明らかに増えている。
「今はやはりネット広告の影響力が大きいですが、高齢者には通販が根強い人気があります。高齢の男性には健康維持のもの、女性にはアンチエイジングのもの、若い女性の間ではダイエット、美肌に関連するものが代わる代わる流行しています」(同)
中でも日本のサプリメント市場を牽引してきた存在といえるのが、テレビCMでも見る機会の多いDHCやファンケルだ。
「いずれも『より品質のいいサプリメントを低価格で広めよう』という方針で成長を遂げた企業といえるでしょう。以前はサプリメントというと、薬局で100錠入りのものを数千円払って買うことが普通でしたが、少量・低価格のものをお試し感覚で買えるようになったのは、両社の存在が大きいと思います。また大塚製薬が販売しているネイチャーメイドも、種類が豊富で薬局展開に強い印象ですね。サプリメントの種類が増えたことで、自分に不足している栄養素を意識して、必要な商品を選べる人も以前より増えてきたでしょう」(同)
またサプリメントの業界は、飲料メーカーのサントリー、アサヒグループや、精密化学メーカーの富士フイルムなど、隣接する業種や他業種からの参入が多いのも特徴だ。「富士フイルムの場合は写真フィルムの主原料がコラーゲンで、そこから健康食品に参入しやすかった」(同)という事情があるそうだが、参入障壁が医薬品に比べて低いのは確かだ。