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第1特集
精神医学の専門家が分析する「障害者施設殺傷事件」のウラ側

精神科医・【岩波明】が徹底分析!粗雑なる「措置入院」制度と相模原大量殺人犯の“正体”

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――今年7月に起き世間を震撼させた、障害者施設殺傷事件。19人という死者を出したこの事件でも、結果としてのちの“大量殺人鬼”を世に放つことになってしまった「措置入院」というシステムが取り沙汰されたことをご記憶の読者も多いだろう。批判も多いこの制度の“欠陥”について、精神科医の立場から専門家が分析する!

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『相模原障害者殺傷事件 ―優生思想とヘイトクライム―』(青土社)

 2016年7月に起きた神奈川県相模原市の障害者施設大量殺傷事件のマスコミ報道において、「措置入院」という用語が繰り返し用いられたことを記憶している人も多いと思う。けれども、この措置入院という「法律用語」が実際にどういう内容を意味しているのか、あるいはどのような患者を対象としているかは、なかなかわかりにくい。しかも実は、一般の人だけでなく医療関係者においても、よく理解していない人が多いのだ。

 措置入院というのは、「精神保健福祉法」という法律で定められた精神科における入院制度。この法律によれば、「自傷・他害の恐れ」のある精神障害者は国家による強制入院の対象となると定められている。「自傷・他害」という言葉も日常生活では聞き慣れないものだが、これは「自らを傷つけたり、他人に危害を加えたりする」ことを意味している。措置入院となる患者の多くは統合失調症であるが、アルコールや薬物乱用による精神疾患も数多い。

 ここではまず統合失調症のケースについて、措置入院の実例を挙げてみたい。この患者は5人もの大量殺人を犯した症例であったが、個人的にも非常に印象深いケースであった。

「中野・騒音殺人事件」などとしても知られるこの事件が起きたのは、1982年10月6日のこと。東京都中野区の住宅街で、22歳の大学生が下宿先の父娘2人を文化包丁で惨殺、さらに隣家にも押し入り、母子3人を殺害するという大惨事が起きた。犯人の内田孝(仮名)は、「下宿のテレビの音と、隣の家の子供の声がうるさいので、10日前から文化包丁を買って殺害の機会をねらっていた」と犯行動機を自供したが、実はこの「騒音」は幻聴であり、加害者は統合失調症に罹患していた。

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