――皮かぶりは男の恥と言わんばかりに、包茎手術が推奨されているが、そもそも包茎は日本だけの問題なのか? 外国人はズルムケとも、よくいわれているが、実際は剥けてない? そんな、人には聞けない包茎の最前線を探る新しい学問、“包茎学”がここに誕生する。
よく雑誌には「包茎だとモテない」と書かれているが、剥けてようがモテないものは、モテない……。
ハゲ、デブ、チビ……世の男性が抱えるコンプレックスにはさまざまなものがあるが、なかでも日本人男性の関心が強いといわれているものが包茎だろう。
雑誌や電車などでも、美容形成外科による包茎手術の広告を目にする機会が多く、それらはたいてい「男を上げろ」だとか「自信を取り戻そう」といったキャッチコピーを用いて、まるで包茎が男性にとって恥であるかのような印象を与えている。日本人が包茎に抱くイメージはおおむねこれらの広告に準じているが、包茎の何が恥ずかしいのか本質的に考えたことはあるだろうか。
よく知られた話だが、包茎には種類がある。包皮口が狭くて亀頭部がまったく見えない真性包茎。剥いた皮が亀頭を絞め上げてしまうカントン包茎。そして通常時は皮かぶりだが、手で包皮をずらしたり勃起したりすると亀頭部が露出できる仮性包茎。このうち真性包茎とカントン包茎は医学的に「病気」として認められているため、恥やコンプレックスとは別次元の問題だ。管轄も美容形成外科ではなく泌尿器科であり、可能であればすぐに相談するべきだろう。だが、日本人に多いとされる仮性包茎に関しては「皮を剥くことができ、ペニスの状態も正常に保てるのだから包茎の範疇にすら含まない」というのが医学界の常識だという。
日本国内の泌尿器科における包茎治療には、ステロイド剤の塗布により皮を薄くして拡がりをよくしたり、亀頭部を出すようにしながら包皮口を拡げ、包皮と亀頭部の癒着を少しずつ剥がすといった手法が取り入れられている。
これに対し美容形成外科の包茎手術は、余っている皮をスパッと切除してしまう。泌尿器科での治療と比べてシンプルに思えるし、宗教における割礼の儀式などでも同様の措置が取られているが、近年の研究によりデメリットも明らかになってきた。ペニスの包皮は亀頭の防菌・保湿を担うと共に性感にまつわる神経なども通っているため、切除することによってこれらの機能が失われてしまうのだ。実際に術後の、亀頭の乾燥や性感の減退なども報告されているという。
そもそも、正常であるはずのペニスに、なぜ手を加えるのか。また、日本人男性はなぜそこまで包茎を忌避するのか。ここでは識者に話を聞きながら、学問として包茎をとらえ、包茎に関する知られざる現状や、ネガティブイメージの正体を、歴史と共に紐解いていこう。