サイゾーpremium  > 特集  > 社会問題  > ASKAに捧ぐ!【麻薬文学】

――ファンタジーやノンフィクションなどで、ドラッグを取り扱った文学は多い。かつてはビートニク世代と呼ばれる小説家たちが、盛んにドラッグを文学に取り入れていった。翻って現代日本ではどうだろうか? コンプライアンスが厳しくなった昨今、果敢にドラッグを小説の題材に取り入れた作品を紹介していく。

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──ドラッグを扱った文学作品を紹介していく本企画。まずはドラッグと文学の相性について伺いたいです。

石丸元章(以下、石丸) 僕は書く立場なのでドラッグをよくモチーフに使うんですが、実に使い勝手のいいアイテムなんですよ。物語の中である日突然、狂ってしまう人物って描きにくいじゃないですか。でも、その理由としてドラッグは最適というか、使いやすいんです。

海猫沢めろん(以下、) すごくわかります。新人賞の下読みをしていると、主人公が破滅する理由としてドラッグが出てくることが多々ありますから。ただ、「この作者、絶対にやったことないだろ」って思うことが多い。一口にドラッグと言ってもアッパー系、ダウナー系、サイケ系とあるのに、その区別すらない作品もありますからね。

磯部涼(以下、) 作者がドラッグをやっているか、やっていないか。ドラッグ文学を語る上では、根本的な話になりますよね。ただ、ドラッグをやっている最中は、文章を書けないでしょう? 書いてもシラフでは読めたものじゃないというか。

 書けないし、書くよりも楽しいことすると思います。そもそも作者がドラッグをやっているかどうかも読み手の想像になるけど。例えば、文学で思いつくのは芥川賞を取った篠原一さんの『壊音 KAI-ON』【1】、あれはなんとなくやっていない気が。あと、日本で一番有名なドラッグ文学といえば、村上龍の『限りなく透明に近いブルー』【2】ですけど……。

 うーん、どうだろう。ただ、描写を見ると、少なくとも書いているときはやっていない気がする。

 それこそ石丸さんの『SPEEDスピード』【3】は、やっている最中に書いたんですか? “シャブ乗り文体”というか、めちゃくちゃ好きな作品なんですけど。

 ありがとうございます(笑)。やってたりやってなかったり、フラッシュバックしてたり。もうメチャクチャです。

 やりまくってる時期ではあったと(笑)。ドラッグをやっている作者として有名なところでは、ヘロイン中毒だったウィリアム・バロウズがいます。彼の“カットアップ”という小説の手法も、普通には書けないから採用したんだと思いますが。

 そうそう。書いた原稿を切り刻んで、それらの言葉をランダムに並べる手法ね。『スピード』も全部で300枚くらいの本なんだけど、1000枚以上書いてカットアップもしてます。ドラッグがキマっている時に書いた文章って、段違いに饒舌になる。10行ですむフレーズを、100行以上書いてたりするんです。各所に奇妙で意味不明な部分も出現する。カットアップすると、雰囲気を残したままブラッシュアップできるんだよね。

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