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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第108回

『ヘル・オア・ハイ・ウォーター』――ハリウッドが黙殺する米南部の非情な搾取構造

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『ヘル・オア・ハイ・ウォーター』

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代々牧場を経営する家系に生まれたトビー&タナー兄弟。だが、実母がガンを患い、牧場を担保に治療費を借りた。返す当てのない借金で、牧場は差し押さえられることになるが……。

監督:デビッド・マッケンジー/出演:クリス・パイン、ベン・フォスターほか。日本公開未定。


 テキサスの銀行を次々に襲うトビーとタナーの兄弟。田舎の小さな銀行だからたいした金はなく、客もロクにいないから目撃者も少ない。町もガランとして道路はスカスカなので、あっさり逃げられる。逃走車は地中に埋める。盗んだ金はカジノでいったんチップにしてから換金して「洗浄」する。

『ヘル・オア・ハイ・ウォーター』で描かれる銀行強盗は、地味でスケールも小さい。これは、ほかの犯罪アクション映画のように、派手なカーチェイスや銃撃戦で観客をスカッとさせることが目的ではなく、映画ではめったに描かれない、アメリカの田舎が抱えるさまざまな問題を抉り出している。

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