――AVのジャンルは多岐に及ぶが、中には「これで本当に興奮できるのか?」と疑問に思ってしまうキワモノもある。こういう作品が生まれるのは、性が多様化した結果なのだろうか? 一般的な常識では理解しがたい、通称“バカAV”を徹底的に考察していく。
馬場准教授考案のもと作成された、「性行為の強度」、「作為性の度合い」の2軸に、「女優の知名度」という3軸が入る「オナニー装置としてのAVマッピング・マトリックス」。例えばアイドルの格好をした上原亜衣がセックスしながら歌うというAVは、作為性・演出度こそ高いものの、ユーザーのニーズを満たす性行為の強度が保持されているため、バカAVには入らない。
『百獣の王ライオンと超アクメSEX』『SEXで作った珈琲』『熟女キョンシーに挑むセックスホラードキュメント』――タイトルから内容がまったく想像できない、通称“バカAV”と呼ばれるこれらの作品は、数年前からネットで話題を集めてきた。今回は、これらバカAVの文化的側面に、焦点を当て考察していく。
まず、バカAVとは何かという問いについて、不定期イベント『バカAV専門学校』を主宰している、ライターの大坪ケムタ氏に解説してもらった。
「バカとは言いますけど、決して否定的な意味ではなく、一般的な感覚から見て“スゴい”と思うような作品がバカAVであると私は思っています。地上20メートルの高さに吊るされた状態でのセックスや、500人で一斉に行う集団セックスなど、バラエティ色の強いものが有名ですね。また、戦隊モノや巨大ヒーローのパロディも人気で、最近は差別化を図るべく設定がどんどんマニアックになっているんですよ。敵の光線を浴びたヒーローが女体化するとか」
つまり、バカAVの定義は「カラミよりも、ビジュアルの派手さにこだわる作品」ということか。しかし、これらでヌケる人が存在するとは思えない。実はウケ狙いで作っているのでは?
「一般的な価値観では理解できなくとも、性癖は人それぞれですから」
そう諭すのはフェティシズムに造詣の深いライター、下関マグロ氏。