――果たして宗教は、女性を抑圧してきたのだろうか? 確かにイスラム教では、男尊女卑による差別があり、旧約聖書では、女性は男性の一部から生まれてきたという記述がある。“性”の問題を取り上げる今回の特集において、ここでは宗教から見る女性論ともいうべき視点を解説してみたい。
ニューヨーク・タイムズが配信した、1975年に撮影された写真の記事。
南仏の高級ビーチリゾート・ニースの浜辺で、青いスカーフと長袖の服を着た女性が、警察官に取り囲まれて脱ぐように促されている──。そんな1枚の写真が今年の夏の終わりにツイッターに投稿され、世界中へと拡散された。
ニースの警察官たちがこのような行動に及んだのは理由がある。今夏、フランスでは7月にカンヌ市がブルキニ着用を禁止したのを皮切りに、30近くもの海沿いの自治体がブルキニ禁止令を出していたのだ。
ブルカとビキニを組み合わせた造語であるブルキニは、肌を出すことが禁じられているイスラム教徒の女性でもビーチで過ごせるようにと、オーストラリア人でイスラム教徒のデザイナーによって開発された。そのデザイナー、アヒーダ・ザネッティ氏に取材した朝日新聞デジタルの記事によると、2004年からオンラインでの販売を始め、08年からこれまでに世界で約70万枚を売り上げたそうだ。
それまで、イスラム教徒の女性はビーチに行っても足を水に浸すくらいしかできなかった。ブルキニを着用することで、初めて海に入れたというイスラム教徒の女性は多い。そのブルキニが、なぜフランス各地で禁止されるに至ったのだろうか。
「ブルキニ禁止令の背景には、フランスに根強く横たわるイスラム嫌悪があります。特にニースでは7月14日に残念ながらイスラム教徒によるテロが起こっており、非常にセンシティブになっていたことが大きく影響しています」