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第1特集
日本のテレビはLGBTに優しいのか?【1】

次なる便利ワードは「LGBT」か? マツコもりゅうちぇるも一緒くた!? 「オネエ」でテレビが覆い隠すもの

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――00年代中盤のオネエブーム以降、すっかりテレビにはオネエタレントが定着した。隆盛を誇る「オネエ」だが、この言葉がいつの間にか男性同性愛者全体を指す単語として機能するようになってはいないだろうか。テレビ業界における同性愛の取り扱われ方の歴史的変遷と、その最新問題を探る。

始祖・美輪明宏から現在に至る ゲイ/トランスの“呼ばれ方”史

現在は「オネエ」で定着しているゲイ/トランスジェンダーのメディア内での呼ばれ方だが、時代に応じて変化してきた。「オネエ」の次は何に変えられるのだろうか?

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50年代「シスター・ボーイ」
ゲイタレントはまだまだ当然数少なく、この言葉は広くゲイを指していたというよりは、当時メディアに多く出演していた美輪明宏のことを指していた。ほかに「ゲイボーイ」という言い方もあった。

70年代「オカマ」
おすぎとピーコが芸能活動を開始したのが75年。一種の自虐として蔑称であった「オカマ」をあえて自称し、メディア上でも広く使用。美輪明宏や、当時はカルーセル麻紀らから反発・批判を受けた。

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80年代「ミスター・レディ」
各地ショーパブの人気ニューハーフを、バラエティに起用するケースが増えた時期。テレビは彼らを「ミスター・レディ」と称した。「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」で日出郎がブレイク。

00年代「オネエ」
女性的な振る舞いや言葉遣いをする、ジェンダー・ロールは男性の男性同性愛者のこと。この数年のテレビでは、心は女性で外見が男性の人物も、多少女性めいた話し方をする男性も、全部ひっくるめた言葉になっている。

(絵/河合寛)


 社会と“性”の関係を考える時、そこにはおおまかにいってジェンダー/セックス/セクシャリティという3つのかかわり方が存在する。むろんこの3つは完全に切り離せるものではなく、相互に絡み合ったものであり、それゆえに、社会における性の問題を語ることは常に困難さを孕んでいる。そして、メディアという装置を通すことで、それらはより複雑さを増していく。

 そんな中で、この数年、世界的な動きを追い風に、日本国内でも「LGBTブーム」が巻き起こっている。2012年7月には「週刊東洋経済」(東洋経済新報社)、「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社)がこぞってLGBT特集を組み、15年には東京都の渋谷区や世田谷区などで同性パートナーシップ制度が設けられた。今年5月のLGBTイベント「東京レインボープライド2016」には保守派で知られる自民党の稲田朋美衆議院議員が参加し、「人権問題としてしっかり取り組んでいきたい」と語るなど、国政の側からの接近も見られている。一方で、テレビをつければ、マツコ・デラックスが八面六臂の活躍を見せ、IKKOやはるな愛らが「オネエタレント」として登場する。テレビの世界は、いち早くセクシャルマイノリティが活躍する場になった、ということもできるだろう。

 だが、多少知識がある人ならわかる通り、広くテレビで「オネエ」と括られるタレントの中には、さまざまな違いがある。クリス松村は見た目は完全に男性だし、はるな愛は性別適合手術を受けたことを公表している。KABA.ちゃんは昨年から今年にかけて性別適合手術を行い、戸籍上の性別も変更し、女性になった。GENKINGやIVANのように、男女どちらとも取れるような外見のタレントもいる。最近では、異性愛者だがそのキャラクターから“オネエ風”と呼ばれるりゅうちぇるのような存在もおり、この言葉は汎用性を増している。簡単にいえば、異性装者だろうが単に男性同性愛者だろうが性同一性障害であろうが、世間が思う男性らしさからはみ出す人々をまとめてそう呼んでいるわけだ。

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