――サブカルを中心に社会問題までを幅広く分析するライター・稲田豊史が、映画、小説、マンガ、アニメなどフィクションをテキストに、超絶難解な乙女心を分析。
8月といえば終戦記念日。終戦記念日の風物詩といえば、ジブリアニメ『火垂るの墓』(88)。その『火垂るの墓』を監督した高畑勲が、『竹取物語』のプロットを下敷きに描いたのが、ジブリ版「女の一生」こと『かぐや姫の物語』(13)だ。
ストーリーは昔話である『かぐや姫』そのまんまなので、特に説明の必要はないだろう。ただし、東大文学部仏文科卒業、ジブリきっての知識人にして、公然と共産党を支持するインテリ左翼の高畑が、これをおとぎ話の単なる焼き直しにするはずはない。本作は、おとぎ話のフォーマットを借りて「女性が社会で被る受難」をねっちり告発した、フェミニズム濃度の高い映画なのだ。
取り急ぎ、フェミ臭の漂う箇所を挙げていこう。
翁はかぐや姫に、高貴な身分の家に嫁ぐのが女の幸せだという価値観を押し付けるが、かぐや姫は育ての親である翁に逆らえない。ここでは、男主導の社会システムに従わざるを得ない女の苦しみが描かれている。