――今年2月、大学の授業を妨げる行為などによる威力業務妨害容疑で、京都大学の中核派系全学連のメンバーらが逮捕された。その後、中核派の活動拠点が動画で報じられるなど、左翼セクトに久々に関心が集まった。そんな“セクト”において、今、“カルト化”が不安視される団体があるという。ジワジワと擦り寄る脅威に、斬り込んでいきたい。
『カルト村で生まれました。』(文藝春秋)
日本において、「カルト」という言葉が急激に浸透したのは1995年、地下鉄サリン事件をはじめとする一連のオウム真理教事件以降のことだ。マスメディアを中心に、“無差別大量殺人行為を行った団体”、すなわち犯罪行為を犯すような反社会的な集団として、オウムが繰り返し「カルト」と紹介されたことで、一気に広まった。
元来カルトとは、宗教的な儀式や祭祀、崇拝などの意を持つ用語である。しかし、それが転じて、ある特定の人物や事物への礼賛、熱狂的な崇拝といった“狂信性”を帯びたものとなり、69年にアメリカで起きた、宗教団体「マンソン・ファミリー」による女優シャロン・テートとその友人の惨殺事件などを機に、反社会的な悪しき集団、特に危険な思想を持つ宗教団体を示す言葉として定着してきた。
とはいえ、日本においては、“国”によって定められた厳格なカルトの定義が存在するわけではない。それゆえに、異質な新興宗教=カルトと指すなど、闇雲に言葉が一人歩きしている印象もある。