――元KGB職員にしてロシア大統領のウラジーミル・プーチン。彼の名をググってみると、真贋不明ながら数多くの伝説がひっかかる。いわく【おそロシア】である。イスラム国からも命を狙われるその強権的な手腕の源泉は何なのか? 日本ではあまり語られることのないプーチンの正体に迫る。
動画共有サイトにアップされた、ロシアで大人気の番組『プーチン・ホットライン』。
さまざまな混乱を含みながら開催されたリオ五輪も、本誌が発売される頃には大詰めを迎えているはずだが、その開催に先立ち、ロシア選手の参加資格をめぐる波乱があったことを記憶している読者も多いだろう。陸上ほか、多数の選手が出場停止となったことに対し、国際社会に断固として抗議の声を上げたのは、やはりこの男だった。
その名前は、ウラジーミル・プーチン。ドーピング疑惑による一連の出場停止問題に、「スポーツが地政学的な圧力の道具にされている」と、国際社会を向こうに回して一歩も引かないこのロシア大統領は、イスラム国に殺害予告されるほどの強硬な姿勢を見せながらも、自国民から圧倒的な支持を得ているという。
「プーチンに対するロシア国民の支持率は去年は89・9パーセントの最高支持率を得たそうですが、その支持の仕方には、絶対的に支持している人と、なんとなく支持している人の2通りがあります。ただ、いずれも共通しているのは、ソ連崩壊後混乱したロシアの経済や社会を短期間で立て直した有能さを支持しているということでしょう」
こう説明するのは、NHKで長年ロシアを取材し続け、ロシアに関する著書もある馬場朝子氏。職業から住むところまでなんでも国が決めてくれたソ連時代から一転し、民主化したのが1991年。結果としてロシア国民の貧富の格差は一気に拡大し、社会は大混乱に陥った。その状態から、社会をまず安定した状況に持っていってくれた人物こそプーチンだということなのだ。