“Sentimental Journey ― The Complete Contact Sheets”, 1971/2015 (c)Nobuyoshi Araki / Courtesy of amanasalto
1971年に荒木経惟が1000部限定で出版した私家版の写真集『センチメンタルな旅』は、日本写真のその後を大きく規定するモニュメンタルな1冊となった。結婚式の写真から始まり、新婚旅行の道程が続くのだが、妻・陽子は終始硬い表情で、よく指摘されるように全編にわたって死の気配さえ漂っている。この中の写真は、病に侵された陽子が他界するまでを1冊にまとめた『センチメンタルな旅・冬の旅』(新潮社/91年)の前半部にも再編集されて収録される。新婚旅行に漂っていた死の気配と感傷は、20年後、妻の病によって強化されることになるが、それらが写真そのものと切り離しがたく結びついていることは、言うまでもないだろう。