――金太郎、花太郎、宝島24。AVを気兼ねなく快適に鑑賞できることから、自宅ではオナニーがしづらい所帯持ちサラリーマンの“救済の場”として機能している個室ビデオ。これまでユーザー目線で店内の様子をレポートするメディアはあったが、ここではその産業の実態やビジネスモデルの問題点に迫ってみたい。
首都圏の個室ビデオ市場を寡占している、〈金太郎・花太郎〉と〈宝島24〉のホームページ。
“個室ビデオ”とは、事実上、個室にこもってアダルトDVDを鑑賞し、自慰行為に耽るために利用されているレンタルルームである。新宿や渋谷などの繁華街を歩けば「DVD鑑賞」「個室鑑賞」などと大書きされた看板がそこかしこに見られるが、その景観は実にいかがわしい。
また、新聞やテレビでは、2008年に大阪市内の個室ビデオで起きた放火事件で16人もの死者が出たことや、12年に地下鉄サリン事件などの実行犯として逮捕されたオウム真理教の高橋克也が「逃走中は3カ所の個室ビデオ店を使っていた」と供述していたことが報道されるなど、ネガティブなイメージもつきまとう。
他方で、近年は週刊誌やネット記事などで「意外と清潔で快適」「サラリーマンのオアシス」「24時間営業だから終電を逃したときに便利」といったメリットが紹介され、マンガ喫茶やネットカフェの代替スペースとしても認知されつつある。
しかし、そのようなユーザー目線の評価は見聞きするものの、アダルト産業の一形態として個室ビデオがどのように位置づけられているのかはあまり語られない。そこで本稿では、個室ビデオにDVDを卸しているAVメーカーなどの話を元にその実態に迫りたい。