――グーグルが提供する広告サービスであるグーグルアドセンスがエロ規制を強行している。その姿勢は表現の自由を犯し、金と権力を使って自社のポリシーに準拠させていることにほかならない。巨大化することでタブー化するグーグルとエロの現状を断固糾弾する!
グーグルが運営するアドネットワーク・グーグルアドセンス(上)。ネットメディアの運営には、欠かせないサービスだが……。
「『グーグル様』を怒らせてはいけない」とは、インターネット上で飛び交っている冗談。しかし、それを冗談とも笑っていられない世の中になりつつあるのかもしれない。少なく見積もっても年間2兆件といわれる検索数を誇るグーグルなしでは、ネットのあらゆる世界は成り立たなくなっている。グーグル様を怒らせたが最後、検索候補にもあがらなくなり結果PVも激減……と、もはやネットの世界では生きていくことはできないのだ。そして、そんな「グーグル様」の逆鱗に触れるもの、それがアダルトサイトやアダルト表現だ。この強制力や唐突に発せられる警告には、多くのメディアがため息をついている。
とはいえ、読者諸兄も日々お世話になっているように、グーグルで検索をすれば、スムーズにアダルトサイトや動画にアクセスすることができる。一般ユーザーにとってはそんな権力を感じる隙はないように思えるが……。「検索において、児童ポルノやグロ系といった特殊な例を除き、グーグルの検索アルゴリズムは適切に運用されています」と語るのは、検索システムの専門家・辻正浩氏だ。
「アフィリエイトなどでは、どうしてもアダルト系が数字を稼ぎやすいネットの世界で、グーグルはユーザーが本当に必要な情報を得られるように、日々アルゴリズムに改善を加えています。07年に初音ミクの画像が消えたり、14年に『ロリ』というワードで検索結果が表示されなかった時には、グーグルの陰謀と囁かれたことがありましたが、これらは意図的なものではなくアルゴリズム変更による『誤爆』と考えていいでしょう」
なるほどネットを代表する巨大サービスとなったグーグルに対する不安や不信の声は根強いようだが、こと検索機能に関しては「利便性と健全性のバランスを取って、適切な運営をしている」と辻氏も賛辞を惜しまない。
しかし、グーグルにとって、検索サービスはビジネスにおけるひとつの側面にすぎない。グーグルの売り上げのうち、89%は広告収入に依存しており(14年第4四半期)、同社は広告業者としての顔のほうが圧倒的な力を持っているのだ。そして、広告事業の柱となっている「グーグルアドセンス」からは、アダルト系の広告や媒体が過度に排除されている。
「同社は不思議な会社で、検索部門と広告部門は別会社というほど断絶されているんです。検索とアドセンスは切り分けて考えなければなりません」(同)