――ここまで、北朝鮮の核・ミサイル開発の費用は、国家予算とは別に設けられた「第2経済」によって運用されているとの見方があると、解説してきた。そして、その主たる資金源となっているのが、ミサイル輸出だ。この北朝鮮の稼ぎ頭について、これまでどのような試算が報じられてきたのか、追っていこう。
『解剖 北朝鮮リスク』(日本経済新聞出版社)
韓国統一部の資料によれば、北朝鮮の弾道ミサイル開発は、1976年に旧ソ連製の短距離弾道ミサイル「スカッドB」を輸入したことに始まるといわれている。北朝鮮はこれをリバースエンジニアリングし、86年には射程300kmのスカッドB、射程500kmのスカッドCの独自生産に成功。現在では、それらを年間100発程度生産できるまでになったと分析されている。さらに、同国がこれまで、イランやシリアなどに対し、スカッドだけでなく「ノドン」も輸出してきたことはご存じの読者も多いだろう。このミサイル輸出については、88年、北朝鮮公式メディア「朝鮮中央通信」が「外貨獲得のために行っている」と明言しており、2000年に訪朝したマデレーン・オルブライト米国務長官に対しても、金正日総書記が同様の発言をしたという記録がある。
では、このスカッドとノドンの輸出による収入はいかほどなのか? 06年7月に北朝鮮が日本海に向けてノドンなど7発を発射した直後、韓国大手紙『朝鮮日報』は、専門家の試算をもとに「北が7発に払った費用は?」という興味深い記事を掲載した。記事によれば、スカッドは1発あたり250~400万ドル(約2億5000万~4億円/1ドル約100円で計算)で輸出され、北朝鮮は一時、年間10億ドル(約1000億円)の利益を上げていたという。さらに、スカッドよりも射程が長いノドンについては、1発1000万ドル(約10億円)で販売されていたとの試算も掲載されていた。ちなみにこの記事内では、「テポドン2号」の本体の製造費(開発費や燃料費を除く)を、250億ウォン(約23億円/1ウォン約0・09円で計算)と試算している。