――早稲田大学の音楽サークル〈GALAXY〉。他大学の学生も入部可なサークルは、創設当初こそソウルの音楽研究サークルだったが、ライムスター宇多丸が部長を務めた以降は、ラッパーを目指さんとする学生が続々と門戸を叩く。おそらく本誌が初であろう、音楽関係者を多数輩出した“ミステリーサークル”を徹底分析。
約40年の歴史を持つギャラクシーへは、ライムスターに憧れて入部を希望する学生が現在も多いようだ。(写真/永峰拓也)
一部では〈日本の音楽業界(特にブラックミュージックといわれるジャンル)のフリーメイソン〉とも称される早稲田大学の音楽系サークル「GALAXY」(以下、ギャラクシー)。正式名称を「早稲田大学ソウルミュージック同好会GALAXY」という音楽サークルが、実際のところ音楽業界においてどれだけの知名度を誇るかは不明だが、日本語ラップ界においては、日本のヒップホップ・シーンを代表するアーティスト、ライムスターが「大学在籍中にグループを結成したサークル」として知られている。
アーティスト以外にもさまざまな人材を音楽業界へ多数輩出してきたギャラクシーであるが、当企画の担当編集によると、「ギャラクシー出身という“利権”は、少なからず業界で作用しているように思う」というような都市伝説がまことしやかに囁かれているという。
今は亡きヒップホップ専門誌「blast」(シンコーミュージック)の編集長を務め、現在はサイバーエージェントの運営によるヒップホップ専門ウェブサイト『Amebreak』の編集長、伊藤雄介氏(第22代部長)は「ギャラクシー出身ということで、“派閥”だの“コネ”だの陰口をたたかれてることはあるかもしれないですね」と話すが、それもそのはず、ギャラクシー出身のOB・OGは現在、アーティスト(ラッパー/シンガー/DJなど)以外にも、伊藤氏のような編集者や音楽ライター、さらにレコード会社、レコードショップ、テレビ/ラジオなどのマスコミ関係、映像クリエイターなど音楽にかかわる幅広い業界に身を置いている。実は筆者もそんなギャラクシーOBのひとりで、現在はフリーの音楽ライターを生業としているが、出身者の立場として、本稿ではライムスターのMummy-Dをはじめ、歴代部長、音楽業界で活躍するOB・OGの声と共に、ギャラクシーの“実態”に迫っていきたい。
音楽サークルなのに体育会系 知識がなければ迫害決定!?
「音楽業界にギャラクシーあり」を決定づけた同人誌「ブラシス」と、ヒップホップ専門誌「blast」。どちらも“ブラ"がついている。
まずはサークルの歴史から紐解くと、現在、鹿児島にて400年以上の歴史をもつ名窯にて「十五代 沈壽官」として活躍する初代部長、大迫一輝氏が1978年に早稲田大学にてギャラクシーを創設した。正式名称にある“ソウルミュージック同好会”の名の通り、当初は60~70年代のソウルミュージック研究に特化したサークルであったが、代替わりするにつれてファンク、ディスコ、ヒップホップとその守備範囲を広げていき、広義でブラックミュージック全般を対象とする音楽同好会へと姿を変えていく。