2001年9月11日、アメリカ同時多発テロが起きる。以後、米国ブッシュ政権を中心とする西側諸国は、首謀者と目されたビン・ラディン率いるアルカイダとそれを庇護するタリバン政権を攻撃、同年10月のアフガニスタン戦争、そして2003年3月のイラク戦争へと突入していく。そして、イスラム過激派組織IS(イスラミック・ステート、イスラム国)は、そのイラク戦争後、イラクで反米・反シーア派政権を旗印にテロ活動を行っていたアルカイダ系組織などを源流とするのである。
『9/11委員会レポート ダイジェスト』(WAVE出版)
保坂氏が最後に紹介するのは、今般の中東混乱の要因のひとつともいえる事件である、9・11テロ――2001年にニューヨークの世界貿易センタービルなどが破壊されたアメリカ同時多発テロ事件――を扱った書籍である。それは、同時多発テロに関する独立調査委員会編『9/11委員会レポート ダイジェスト』(WAVE出版)だ。
「この本を紹介する意図は2つ。まずひとつは、原文のほうは、内容が非常に濃いということ。米議員や専門家、学者からなる委員会が提出したレポートですが、学術的な本と比較してもとてもレベルが高く、当時調べられる限りのことがきっちりと反映されている。CIAやFBIなどの資料もふんだんに取り入れ、イスラム過激派がなぜテロ行為に走ったか、またアメリカ国内での彼らの動きなども詳細にまとめられています」