すべて中平卓馬「Untitled」(2005~11年)
中平卓馬が亡くなって半年近くがたつが、あまり実感がない。今でも自転車に乗って毎日撮影に出かけているのではないかと思えてしまう。晩年の中平のカラー写真は、月並みな言い方をすれば生命力に溢れていたし、あの延々と続くかに思われた撮影行為が終わりを迎えることは想像しがたかったからだ。
中平は写真を自らの生の中に組み込んでおり、写真を撮影しそれを見ることは就寝や入浴、食事、排泄などとともに彼の生と不可分なものとしてあった。一生のうちに幾度となく反復する「食べる」「寝る」「起きる」といった動詞とまったく同じレベルで「撮る」があった人間を、私はほかに知らない。