――2020年の東京オリンピックを見込んだ建築ラッシュや杭打ち捏造問題など、土建が話題になる昨今。本誌10月号で開催された土方文学大賞のスピンオフ版が満を持して開催。サラリーマンマンガから、グルメにSFまで――土方マンガとはなんぞや? を語りつつ、珠玉のラインナップをレビューしていく。
今回の企画に参加してくれた皆さま。左から作家の石丸氏、「建設築通信新聞」上長氏、同・田中氏、古書店店主の向井氏、BL好きライターの青柳氏。
――今回のテーマは「土方マンガ」。土木建築の現場や、そこで働く人々にスポットを当てたマンガをレビューしていきます。これは『サイゾー』2015年10月号に掲載された「土方文学」企画の続編に当たります。ご登場いただくのは、土木建築フリーペーパー「BLUE’S MAGAZINE」の石丸元章さん(以下、石)、建設専門紙「建設通信新聞」の田中一博さん(田)・上長希美さん(上)、早稲田の古書店「古書現世」の向井透史さん(向)、BLに詳しいライターの青柳美帆子さん(青)です。
石 土木作業の現場で働く方々は、実際には「職人」です。ここでは、それを含めた呼称として「土方」という言葉を用います。さて、今では女性を主人公にした松本小夢の『ドボジョ!』【1】など、さまざまな設定の作品がありますが、最初にメジャーで連載された土方マンガは、おそらく若林健次の『ドトウの笹口組』【2】だと思います。土建屋「笹口組」のキャラクターがとにかく可愛いコメディ作品です。今回、改めていろいろ読み返してみて感じましたが、料理マンガにおける『味いちもんめ』(あべ善太原案・倉田よしみ作画/小学館)のような、成長物語がなぜか少ない。
上 料理マンガなら「花板になる」みたいな目標が設定できますが、土方マンガだと、成長の先にわかりやすいゴールが見えない感じはありますね。
――成長物語の要素もなきにしもあらずですが、最初から技術や才能を持っているケースが多いかもしれないですね。西条真二の『大棟梁』【3】しかり、藤木俊の『こわしや我聞』【4】しかり。