メディアでやり玉に上げられる、あの娘が心配!お節介でうだつの上がらない中年コラムニストが、世の中で報道されてるネガティブな事象をポジティブに考察する。
『田畑智子』
11月5日、女優・田畑智子が自宅で睡眠薬を飲んで手首を切ったとの報道がされた。後に場所が、交際している俳優・岡田義徳の自宅であることが判明。世間は「痴情のもつれか?」と色めき立った。この件でマッチの自宅で自殺未遂を図った中森明菜のことを思い出した人は、30代後半の人たちだと思われる。
恥ずかしながら、高部あいを知ったのは、コカイン所持容疑で逮捕されてからのことだ。
初めて顔を見た瞬間「かわいい! アノ娘は誰?」と興奮したものの、そもそもが「コカイン所持容疑で逮捕」のニュースから入っているわけで、明らかに愚問であった。
それにしても惜しい。もっと早く出会えていれば……。ビートルズを知った時、ジョン・レノンはもうこの世にいなかったぐらいの切なさだ。
とはいえ、逮捕されたことにより「撮影したドラマの対応、妊娠発覚、交友関係に加護亜依の名が……」など、次々出てくる情報を見ても、この連載が始まって以来の好物件であることに変わりはない。
「この勝負、もらった」
思わず舌舐めずりをした入稿日の前日、担当編集から連絡が入った。
「高部あいは、前号の笹公人さんの連載で使っているので、田畑智子でいってください」
業界関係者、知人のみならず、駆け出しの中年コラムニストにまで影響を及ぼすとは、高部あい恐るべし。
というわけで、今回は田畑智子である。
11月5日 早朝、マンションで手首を切り、病院に搬送されたとの一報が入る。
その後「睡眠薬を服用、カボチャを切ろうとして誤って手首を切った、マンションは俳優・岡田義徳の自宅だった……」など、次々出てくる情報を見るにつけ、この連載始まって以来2番目の好物件であるという確信を持った。
まず私は子どもの頃、食卓によくかぼちゃの煮つけが出ていたことを思い出し、母に「かぼちゃを切る際に手首を切ってしまう可能性はあるか?」と尋ねてみた。
すると母は「アンタが食べていたかぼちゃの煮つけは、近所のお惣菜屋さんのやつだよ」と衝撃のカミングアウト。私の「おふくろの味」は、見ず知らずのパートのおばちゃんのものだったのである。
そんなチンケな事実はさておき、結局のところ田畑の件は「睡眠薬でボーッとしている時にかぼちゃを切ろうとして、左手親指の付け根を切ってしまった」と本人が弁明。
なんだ、普通じゃん。誰だ「事実は小説よりも奇なり」とか言った奴は。コカイン吸って出直してこい!!
それでもマスコミは「自殺」の線を探りたいようだが、そもそも今回の件で岡田との半同棲が発覚したのである。もっとほかに聞くことがあるだろう。
「結婚は?」とか「どっちから告ったの?」とか「もうハロウィン終わってるよ」とか。どうも世間は殺伐としていていけない。
唯一、退院後の田畑とドラマ共演した水野美紀は「かぼちゃはチンして切るように」とアドバイスしたそうだが、それだと料理の味が変わってしまうんじゃないか? という別の心配が発生してしまう。
それにしても、岡田といえばドラマ『木更津キャッツアイ』(TBS)でうっちー役を演じ、劇中で平岩紙が演じるミー子と付き合っているという設定だったが、特段の美男美女という組み合わせでもないため、ドラマのなかでの周囲の反応も「まあ、いいか」ぐらいであった。今回、現実の岡田と田畑の組み合わせにおいても、世間は同じような反応をしているように感じる。
それはそれで、好感が持てるのだが、そもそもこの騒動で双方のコメントから察するに「地方の仕事から早朝帰ってくる岡田のために、朝食をつくろうとして起きた事故」のようである。そうなると途端に温かいエピソードになりはしまいか。
仕事から疲れて帰ってきた男が、自宅の玄関を開けると台所から温かい朝食の匂い。エプロン姿の愛する女が、柔らかい笑顔で迎えてくれる。
「おかえり」その眩しさが、差し込む朝日のせいなのかはわからない。
「かぼちゃの煮つけか〜。子供の頃、母親がよく作ってくれたんだよね」
「もうすぐできるから、ちょっと待っててね」
「でもさ、かぼちゃ切るのって危ないから気をつけろよ」
「でも……」
「俺は、お前がケガするくらいなら、惣菜屋のかぼちゃでも構わないよ」
本当はあの日、事故が起きさえしなければ、こんな会話が2人の間で交わされていたのかもしれない。あなたの街のお惣菜屋さんは、おふくろの味を提供するだけではないのです。愛する人を守るために存在しているものなのですよ。多分。
西国分寺哀(にしこくぶんじ・あい)
自殺未遂!? 交際発覚! よりも2年ほど前に田畑智子がヘアヌード写真集を出していたことのほうに驚いている30代独身男性。