――お笑い芸人という人気職業を夢見て散っていく若者は少なくない。元三福星の花輪氏が解散後に見いだしたのは、飴細工師という職人だった──。
(写真/有高唯之)
指先が軽く触れると白い球体が横に伸びた。はさみを入れるや、脚が現れ、耳が現れ、動物の形状に変わっていく。胴体に管で空気を吹き込んで着色すると、客の飼い猫写真そっくりの飴が出来上がった。
熱した飴が固まる前の約3分間を利用して、造形物を完成させる工芸、飴細工。客と「どんな耳ですか? 何色?」と会話しながら器用に作り上げた職人・花輪茶之介は、前職がお笑い芸人という斬新な経歴の持ち主である。
高校時代、『爆笑オンエアバトル』(NHK)にはまってお笑い好きになった花輪は、人力舎の養成所に入学。02年にトリオ・三福星を結成した。ほかの2人がネタを考えていたこともあり、自然と小道具制作を担当するようになる。