――建築メディアを読むと、知らない単語が現れたり、言葉の使われ方が普段知っているそれとは違うことに気がつく。そこで頻出する12個のキーワードを、その言葉が背負った文脈から超真面目に解説してみたい。
■まさに「近代」を築いた思想
[モダニズム]
【もだにずむ】近代の啓蒙思想と産業革命を背景とし、20世紀初頭のヨーロッパに現れた建築思潮。それまでの歴史主義の建築の権威性を批判して、機能主義や合理主義を標榜し、伝統からの断絶を訴えた。鉄・ガラス・コンクリートなどの近代的材料を用い、表面装飾を排した平滑な面と線による構成が特徴。要素が抽象化されてシンプルになったぶん、それを美しく見せるには特別な造形的センスがいる。一般市民のための大衆化・量産化を目指したその建築は、第二次大戦後、経済主義と結びついて世界の都市を席巻した。
(写真/近代建築の三大巨匠と称されるル・コルビュジエによるサヴォア邸〈フランス〉。(c)Valueyou)
■次の東京五輪を彼ならどう見る?
[丹下健三]
【たんげ・けんぞう】戦後日本を代表する建築家(1913-2005)。敗戦後、被爆地の広島ピースセンターに始まり、戦後民主主義を担う各地の庁舎建築や東京オリンピックのための代々木体育館、大阪万博のお祭り広場など、大規模な公共建築を多く手がけ、時代と併走した。旧世代による白い単調なモダニズム建築を「衛生陶器」と揶揄し、日本の伝統への意識と最先端の構造技術に基づき、独自の空間造形を展開。東大の丹下研究室からは、槇文彦、磯崎新、黒川紀章、谷口吉生ら、多彩な建築家を輩出している。
(写真/代々木体育館。今般の競技場問題を受けて議論の俎上に上がることも多い。(c)Rs1421)